高麗屋三代同時襲名興行の口上を愉しむ(2018年壽初春大歌舞伎)

1月24日の夜の部の華は何といっても高麗屋三代同時襲名の口上でした。舞台に22人の歌舞伎役者が横一列に並んだ景色は壮観です。初日や千穐楽ではありませんでしたが、列座された歌舞伎役者ひとりひとりからユーモア溢れる口上をたっぷり聞くことができました。

口上では歌舞伎仲間から思わぬ秘話や暴露話が飛び出すのが常。なかでも口上あいさつの面白さで抜きんでていると評判なのが左團次さん。さすがに高麗屋三代同時襲名とあって、いじりは影を潜めたものの、小学生時代のエピソードを自虐ネタを交えて披露して下さいました。

「新白鸚さんとは暁星(学園)の同窓で、白鸚さんは小学校の時に級長をされていました。中学の時には授業が終わると、ばあやさんが迎えに来て、踊りや長唄の稽古に行っていました。私は高校の時、踊りや長唄の稽古に行かず、キャバレーに行ってました」

倅もお世話になった暁星学園は歌舞伎役者の学び舎としても知られています。昨今は暁星高校が進学校化して、さすがに有名役者の子弟が通うことは稀になったようですが、列座した梨園一の長身坂東弥十郎さんからも暁星学園時代の思い出話が飛び出して吃驚、次に控える演目「勧進帳」への期待は膨らむばかり。


一方、歌舞伎座タワー5Fのギャラリー内木挽町ホールでは「高麗屋のコりゃイイや」という三代同時襲名記念特別展が開催されていました(会期は2/25まで)。高麗屋を早口でまくしたてると<高麗屋>になるのだそうです・・・なんとも粋なタイトルです。会場では37年前の口上の録画が全篇見られるほか、海洋堂特製1/1スケール、等身大の十代目松本幸四郎演じる「車引」の松王丸が鎮座しています。これから歌舞伎座へ足を運ぶ皆さん、三代同時襲名のイベントもお見逃しなく。