日欧EPA大枠合意の恩恵や如何に?

難航して決裂するのではないかと懸念していた日欧EPAが大枠合意されたことで、フランスやイタリアから輸入されるワインやチーズの価格は今後どうなるのでしょうか。

EPA(Economic Partnership Agreement)とは経済連携協定のこと、当然、日欧間で互恵的なものでなければなりません。規制緩和や投資環境整備もテーマではありますが、焦点は何といっても関税の撤廃乃至は削減です。個人的な関心はワインとチーズですので、この2品目に絞ってこれからの価格動向を占ってみることにします。


現在、ワインには輸入価格の15%か1リットル当たり125円のいずれか安い方に関税が賦課されいていますが、EPAが発効すれば即時撤廃されることになります。通常ボトル(750ミリリットル)であれば100円弱の関税がなくなり、店頭価格に反映されることになります。確かに1000円前後の家呑みワインであれば値引率は小さくありませんが、そもそもフランス産のワインはスーパーの店頭に並ぶものでも価格は2000円前後はします。低価格帯のワインならいざ知らず、中級高級ワインとなると関税撤廃の恩恵は乏しいように感じられます。チリワインの関税(現在5%前後か)は2019年には完全撤廃されますので、コスパではチリワインに軍配が上がりそうです。ワインの輸入商社などは、為替の影響が大きいので、安易な価格引き下げには応じないと強気の構えです。ポイントは、2000円未満のフランスワイン(又はイタリアワイン)でお得な銘柄を探すにかぎるということでしょうか。

ヨーロッパを旅して一番驚くのがチーズの内外価格差です。ナチュラルチーズには最大29.8%の関税がかけられているからです。こちらは低関税輸入枠を設けた上で16年目に撤廃という気の長い話です。ハードタイプのゴーダチーズは好きなチーズのひとつですが、16年目に撤廃とはかなり待たされることになります。日本の酪農農家への配慮からでしょうか。

保護主義を掲げるトランプ大統領はTPPから離脱、日欧が対照的にEPAを推進したこと自体は歓迎すべきことだと思っています。ただ、国産ワインや国産チーズの品質が近年一段と向上していることを考えると、消費者がやみくもにブランド産品に飛びついて、せっかく育ってきた国内生産農家が廃業や規模縮小に追い込まれることが最も懸念される副作用です。ワイン(チーズ)ラバーには、バランスよく国産にも目を向けてあげて欲しいものです。