土用の丑の日がやってくる〜新仔うなぎとは何ぞや〜


今年の土用の丑の日は、一の丑7月25日(火)と二の丑8月6日(日)の2日です。土用とは立春立夏立秋立冬直前の18日間を指しますから、厳密にいえばもっと日数があるわけですが、夏場の土用の丑の日立秋の前18日間)だけが世間の耳目を集めるのは何故でしょうか・・・

夏場にうなぎが売れないと嘆くうなぎ屋のために、平賀源内が「本日土用の丑の日」という看板を掲げて客集めをしたところ、大評判になって土用の丑の日にはうなぎという食習慣が定着したと伝えられています。そもそも、なぜ土用の丑の日に「う」のつく食べ物(梅干しやうどん)がよしとされるのかいまひとつ釈然としませんが、理屈抜きで鰻(漢字にしないと美味しそうな気がしません)が好きなので、この時期にうなぎが話題になるのは大歓迎です。

3年前、ニホンウナギ絶滅危惧種IB類(ジャイアントパンダやトキと同じカテゴリーです)に指定されたときは肝を冷やしました。うなぎの生態は今も謎で商業的完全養殖は未だ実現していません。従って、今我々が口にしているうなぎは、天然の稚魚シラスウナギを漁獲し育てたものなのです。

7月に入って水産庁が発表したばかりの「ウナギをめぐる状況と対策について」というレポートを読むと、ウナギ(生物としてカタカタ表記にします)という生き物の生態は謎だらけだということが分かります。レポートの冒頭にはこんな下りがあります。<ニホンウナギは、5年から15年間、河川や河口域で生活した後、海へ下り、日本から約2000km離れたマリアナ諸島付近の海域で産卵。産卵場が特定されたのは、平成23年2月(研究開始から36年)であり、依然としてその生態に不明な点が多い>

近年はシラスウナギの国内漁獲量だけでは需要を賄えず、5〜10%は輸入に頼っていることもレポートから学びました。どうやら、今後もウナギ資源を安定的に管理するためには、1)シラスウナギの採捕制限、2)親ウナギの漁獲抑制、3)池入れ数量管理を三位一体で推進しなければいけないというのが水産庁の結論のようです。最後の池入れ数量は業界(ひいては自分のような鰻好きの輩)の利権に配慮してか緩いハードルになっているようで、ウナギ資源もうなぎの食文化も守れないのではと危惧の声も聞こえてきます。


子供や孫の代までうなぎが食べられるようにと、鰻を絶つ覚悟が出来ればいいのですが・・・無理です。最近、スーパーなどで目につくようになった「新仔うなぎ」(写真右)が気になっています。調べてみると、池入れから1年未満で出荷サイズに達した若いうなぎのことを指すのですね。大きいながらも身と皮がふっくら柔らかいのが特徴のようです。ちなみに成長の遅い天然うなぎは食卓にのぼるまでに3〜5年は掛かります。ひときわ成長の早い希少精鋭うなぎは値段も少し高めに設定されています。今年こそ「新仔うなぎ」を食べてみたいものです。養鰻業者も一押しの希少鰻も、クジラのようにやがて食卓から消えてしまうのでしょうか。