人工知能はどこまで進化するのか?

先月27日、米グーグル傘下の英ディープマインド社が開発したAI「アルファ碁」が中国の最強棋士に3戦全勝して、改めて人工知能の凄さを世界に見せつけました。完膚なきまでにうちのめされた柯潔九段は、終局後「もうつらい思いはしたくない」と会見で述べています。人間同士の戦いでしか得られない感動があるという棋士の弁は敗北を認めたようなものです。

ディープマインド社の創業は2010年、CEOのデミス・ハサビス氏(1976年生)はゲーム開発者であり神経科学者でもあります。創業からわずか7年で開発した「アルファ碁」が世界最強棋士を打ち負かすという冷酷な現実に誰しも驚愕させられます。知性の解明という難題に取り組むのは同社社員の500人、この挑戦を「AI版アポロ計画」になぞらえているそうです。記憶、想像力、言語、概念のすべてもAIが獲得できると氏は云います。

人工知能をロボットに譬えるのは必ずしも適当ではありませんが、チェスにはじまり将棋、碁と立て続けにロボットに敗北したとあっては、棋士ならずとも心中も穏やかではいられません。ロボット(人工知能はさしずめロボットの脳にあたります)に譬えようがマシンに譬えようが、開発者は人間なのだから素直に喜べばいいという見方に与するわけにはいきません。なにしろ、AIはディープラーニング(深層学習)という高度な武器を身に着け絶えず進化しているからです。専門家曰く、ディープラーニング人工知能研究における50年来のブレイクスルーだそうです。2015年3月に刊行された『人工知能は人間を超えるか』のなかで著者松尾豊氏は、<囲碁は、将棋よりもさらに盤面の組み合わせが厖大になるので、人工知能が人間に追いつくにはまだしばらく時間がかかりそうだ>と述べています。今回の「アルファ碁」の快挙(!?)は、時間軸において、あっさり専門家の予想を裏切った格好です。

ディープラーニングあるいは特徴表現学習によって武装した人工知能の未来は、ある意味、とても不気味です。2045年には人間の脳を超え自我を持って人類を支配する「シンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると主張する専門家もいるわけですから、なおさらです。

意思決定のプロセスを可視化して人類が最終的にAIを制御できるのかどうか、人類の挑戦はこれからです。