信楽の大壺〜後日譚〜


渡辺愛子さんの陶芸展が終幕し、信楽の大壺がとうとう我が家にやってきました。大壺は高さが50センチ近く、幅も40センチ以上ありますから、梱包は想像以上に大きいものでした。聞けば、担当マネージャーのT氏自ら梱包なさったそうです。

実際に設置してみると、あらかじめ採寸したとおり、ぴったりとスペースに収まりました。家内が早速アーティフィシャルなナナカマドを抛げ入れました。土ものの大壺には自然のままの風姿を活かした抛げ入れ花がお似合いです。秋には紅葉、新春は啓翁桜というぐあいに季節に応じて工夫してみようと思っています。

梱包を解くとなかから手書きの段ボール紙が現れました。T氏のイラスト付きでなんともユーモラスな内容です。壺を抱きしめるT氏は我が子を手放したくないようにも見えます。人柄もさることながら、美術部マネージャーだけあって絵心もわきまえていらっしゃいます。こんな洒脱な手紙が届くと買い手はこの上なく嬉しいものです。

出品された大壺数点は完売だったそうです(珍事だそうです)。御礼方々、T氏に電話を差し上げたところ、飲食店の方や古美術好きの方がお買い求めになったのだとか。もう少し信楽を勉強してみようと、オークションで1999年に開催されたMIHO MUSEUM最初の企画展の図録(『信楽 壺中の天』)を落札しました。神田の図録専門古書店でも見当たらない貴重な文献です。作り手渡辺さんは当時7度もこの企画展に足を運んだのだそうです。道理で我が家の大壺にも古信楽の風情がそこはかとなく漂っています。

次回の個展では<蹲>と銀座小十でも見かけたことのある<陶筥皿>を物色したいと思っています。