日本野鳥の会主席研究員と歩く明治神宮の森


一度、野鳥に詳しい専門家から野鳥観察の基本を学ぼうと思い、一昨日、明治神宮で開催された観察会に足を運びました。近年、パワースポットとして注目されている明治神宮ですが、実は「人工」と「自然」という二律背反世界が融合した不思議な楽園なのです。整備された玉砂利の参道から決して見えないアカマツの樹上でオオタカが営巣しているなんて、想像しただけでワクワクします。

明治神宮の開門時間をご存知でしょうか。冬場、6時40分だった開門時間は春先から月を重ねるに従って少しづつ早まり、5月に入ると早朝5時に開門されます(〜8月)。日もずいぶん長くなってきて、生き物の命が育まれるこの季節、早起きすると普段はなかなか見かけない鳥に出会えるものです。右の写真は近所の玉川上水で撮影したオナガダイサギです。なかなか狙って撮影できるものではないので、新緑のこの時期は野鳥撮影にうってつけなのです。

この日、北参道の鳥居前にバードウオッチャーが集まり始めると、「スィスィスィー」というヤマガラの地鳴きが聞こえてきます。森閑とした境内にいるせいか耳に心地よく届きます。鳥居を右手にしばらく進むと北池が現れます。起伏のある芝生の上ではカップルや家族連れが思い思いの姿で寛いでいます。カワセミの飛来に期待しましたが不調に終わりました。その代りでもありませんが。準絶滅危惧種にあたる日本固有種のニホンイシガメを目にしました。

西参道をそぞろ歩きしながら、主席研究員の安西さんからなかなか興味深い話を伺えました。鳥類は世界で約1万種(そのうち6000種がスズメ目)。100万種存在するといわれる虫に比べれば圧倒的に数が少ないので、比較的、研究が進んでいる生き物なのだそうです。虫は鳥の餌食にならないように進化を重ね、蝶の翅に鱗粉があるのは捕食しようとする鳥を驚かす役割も果たしているのだとか。


飛翔する野鳥を見極めるには先ず身近な鳥の大きさを知ることだと教わりました。モノサシ鳥と呼ばれる「スズメ・ムクドリ・ハト・カラス」でさえ、その大きさを正しく理解している人は多くはないでしょう。そして、こうした身近な鳥すべてが沖縄も含めた日本全土に生息するかというとそうでもないのです。このなかで最も広く分布しているのはスズメではなくヒヨドリです。このヒヨドリ、日本や朝鮮には広く分布するものの、他の地域では生息数が少ないため、日本を訪れる(鳥好きの)外国人がこの鳥を見つけると”brown-eared bulbul”と叫んで大喜びするのだそうです。実家では害鳥扱いだったヒヨドリ、世界的に見れば珍鳥なのですね。

昭和22年に始まり今年で70年を迎えるという明治神宮探鳥会の一端に触れた一日でした。

新・山野の鳥―野鳥観察ハンディ図鑑

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