箱根・湯河原の旅(2)〜<湯河原離宮>宿泊記〜

箱根大涌谷から湯河原に移動して、今年3/31にオープンしたばかりのシリーズ4作目となる<湯河原離宮>に宿泊しました。前都知事が週末通ったという湯河原、取材陣が押し寄せ当時はさぞや地元では迷惑だったことでしょう。古来から「薬師の湯」として知られ、奈良薬師寺の僧行基が病に苦しむ乞食に命ぜられるまま訪れたのが湯河原だったと云われます。

都内から2時間足らずのアクセスは評価できるのですが、如何せん、温泉街の寂れようは否めません。近年の全国各地の温泉街凋落に乗じて、リゾートトラストは明治天皇勝海舟も投泊したという箱根の老舗旅館奈良屋に続いて、天野屋旅館(写真上)も掌中に収め<湯河原離宮>を新たに開設しました。天野屋旅館は漱石が未完の遺作となった『明暗』を執筆した場所としても知られています。<箱根離宮>も<湯河原離宮>も元は高級老舗旅館だった上に、国の登録有形文化財でした。資金繰りに行き詰まったり相続税支払いのために、こうした老舗旅館が解体撤去される事例は後を絶たないようです。地元でリ社への風当たりが強くなるのも当然かも知れません。

指定文化財としての建築物の保存再生には高いハードルがあって然るべしというのがかねてからの持論です。まして老舗旅館など水回りも含め不便なだけで相当なおカネをかけないかぎり、宿泊施設としての魅力はありません。老舗旅館をどうしても温存保全したいのであれば、地元自治体が資金を工面するしかありません。187室の<湯河原離宮>が出来て、会員制とはいえ相応の観光客が湯河原を訪れるのですから、地元は歓迎しても良さそうなものですが・・・いずれにせよ、建築物としての文化財指定には厳しい選別が必要ではないでしょうか。

さて、その<湯河原離宮>、肝心の施設の評価はどうなのでしょう。基本コンセプトは琳派モダン、尾形光琳紅白梅図屏風中央の川を想起させるS字カーブが施設随所にあしらわれていました。エントランスロビー正面には水庭が拡がり、オーナーズレセプションは金銀黒のメタル格子で構成されています。到着時はゲストがロビーに溢れ興覚めでしたが、翌朝落ち着いて見てみれば悪くはありません。

お部屋はベーシックなCBタイプを選択、和モダンのシンプルな内装と下足禁止部屋履きのみの点は評価に値します。<有馬離宮>同様、露天風呂へ専用バスローブで移動できる点も便宜で、概ね部屋周りは合格点でした。10月には友人と専用露天風呂を備えたSタイプに宿泊予定なので、改めて最高グレードの室内をレポートするつもりです。

この施設の周辺には万葉公園やししどの窟といった名所もありますが、徒歩圏内に限れば見るべきものはありません。従って、15時にチェックインして4つの異なった泉質を生かしたという露天風呂を愉しむというのが、<湯河原離宮>ステイの常道ではないでしょうか。