東芝よおまえもか〜サンクコストの呪縛〜

債務超過に転落した東芝半導体事業と放送機器企業に台湾の鴻海精密工業が関心を示しているのだそうです。2016年末で1912億円の債務超過、2017年3月決算期末も債務超過の回避は避けられないという東芝は、虎の子の半導体事業を4/1付けで「東芝メモリ」に分社化することを決めていて売却先を検討中といいます。シャープに続き、またしても外資に身売りということになるのでしょうか。

東芝は2016年3月期に営業利益の水増しで4600億円の純損失を計上したばかり。2017年3月末は1500億円の黒字計上見通しでしたから、またしても欺かれた株主や取引金融機関はさぞや呆れ返っているに違いありません。2016年3月末時点ではありますが、東芝株の8.61%を保有するのはGPIFと日銀なのです(含み損は昨夏で130億円規模とも)・・・。過年度の悪質な粉飾決算に加え、2006年に熾烈な争奪戦の末約54億ドルで買収した米国原発メーカーのウェスチングハウス社(以下:WH社)の苦境が東芝を崖っぷちに追いつめています。内部通報で明らかになったというWH社の買収に伴う損失計上、これも粉飾決算に他なりません。

東日本大震災後、世界各地で原発の建設が凍結されて買収時のバラ色のシナリオは大きく崩れてしまいました。原発建設コストは安全運転のための費用と言われます。建設コストが上昇すれば原子力発電の採算は悪化し需要は冷え込みます。原油価格の下落も手伝って、火力発電のコストに比べて原発コストが相対的に高くなってしまいました。

債務超過の直接の火種は、東芝傘下のWH社が2015年に買収した米原子力サービス会社のCB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)にありました。買収価額は円換算で約270億円(230百万ドル)、契約時点でのS&Wの企業価値は1300億円、買収後に第三者会計士が試算したところ数千億円規模のマイナスの価値しかなかったといいます。買収価額の見積もりが甘いというレベルの話ではなく詐欺にあったようなものです。

そんな無謀な買収に親会社の東芝はなぜGOサインを出したのでしょうか。あろうことか、S&Wの売主は東芝の訴訟相手、訴訟の長期化を避けWH社の収益悪化を隠蔽しようとする意図があったとも伝えられます。福島原発事故後、米原子力規制委員会(NRC)の規制が強化され、WH社アメリカ国内で受注し建設中の4基の建設費が1基あたり1500億円以上増えているといわれます。このサンクコスト(埋没費用)はベンダーであるWH社の親会社東芝が負担するしかありません。現旧経営陣は原発事業からの撤退時期を見誤り、サンクコストの呪縛に囚われてしまったに違いありません。初期投資を無駄にできないという呪縛が東芝を度重なる追加投資に駆り立てたのです。

いまだに2016年度の業績見通しを発表できないでいる断末魔の東芝の未来はかぎりなく暗い。メインバンクの三井住友はじめメガバンクは融資継続するとはいうものの、銀行主導で東芝のコア事業は早晩売却され、いずれは解体されて事実上東芝はなくなってしまうのはないでしょうか。