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「門出二人桃太郎」〜血脈を繋ぐ初舞台〜


昨日は、中村勘九郎さんの長男七緒八君(5歳)と次男哲之君(3歳)の初舞台「門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)」を観に歌舞伎座へ。一幕見にさえ長蛇の列、なんとか滑り込みましたがその直後、札止めになってしまいました。2月2日に初舞台を迎えた兄弟は、それぞれ三代目中村勘太郎、二代目中村長三郎を名乗ることになりました。

初舞台や襲名披露は、歌舞伎役者にとって一生に一度の特別の舞台。歌舞伎ファンも万感の思いで迎える晴れやかな舞台なのです。戦前こそささやかに行われていたという襲名ですが、今や歌舞伎界挙げての一大イベントになっています。血筋を引いた子や孫が「家」の芸を代々継承していくというこのしきたりに、憧憬と羨望を感じる人は少なくないのではないでしょうか。歌舞伎ファンであればなおさらです。

一子相伝とか父子相伝という言葉に計り知れない重みを感じないわけにはいきません。皇室や梨園の世界に時として特別の感情が頭をもたげるのは、代々血脈を繋いできたその歴史に思いを馳せるからです。

2012年12月、中村勘三郎さんが急逝してから4年、二人のお孫さんが遺志を継いで歌舞伎役者の道を歩み始めました。勘三郎さんから数えて三代、桃太郎で初舞台を踏んだことになります。ちょうど30年前、初舞台を踏んだ勘九郎七之助兄弟の姿が重なります。

黄色い緞帳のせいでしょうか、開演前から歌舞伎座は華やいだ空気に包まれていました。幕が開くと、大きな桃がお婆さんの前に現れ、やがてふたりの元気な男の子が飛び出し「鬼退治に出かけます」と高らかに宣言します。花道からは、鬼ヶ島にお供することになる犬猿雉(染五郎松緑菊之助)の従者が登場し、菊五郎演じる吉備津神社神主と巫女が続きます。二人に寄り添うのは勘九郎七之助演じる息子夫婦。一堂が勢ぞろいすると、次々と口上が述べられます。いやはや豪華な顔ぶれです。

桃太郎兄弟は鎧姿に身を固め鬼ヶ島へ。父勘九郎演じる二役目の鬼の総大将相手にふたりは大立ち回り。とうとう鬼を降参させて宝物をせしめます。わずか30分の演目でしたが、ふたりの門出にふさわしい舞台でした。連日の舞台の疲れからでしょうか、黒子に支えられながら睡魔と闘い懸命に演じる長三郎君、的確に所作をこなしながら堂々たる発声で弟の分も務め上げる勘太郎君。微笑ましいふたりの演技に会場からは万雷の拍手が送られました。

初舞台の蔭に厳しい稽古と家族の支えがあったに違いありません。幼いふたりの胸に秘められた歌舞伎役者としての決意を感じさせる見事な舞台でした。これからの役者としてのふたりの成長をひとりの歌舞伎ファンとして見守りたいと思っています。