壬生寺といえば壬生大念佛狂言〜冬季初公開の狂言堂へ〜

春と秋の特別拝観目当てで京都を訪れたことは数え切れませんが、今年で51回目となる「京の冬の旅」とのコラボ企画「非公開文化財特別公開」にスケジュールを合わせたのは今回が初めて。旅に出かける前に必ずチェックするポータルサイト”KYOTOdesign”で確認してみると、春秋に匹敵する数の寺社の特別公開が行われていることが分かります。オフシーズンにも積極的に観光客の誘致を図ろうとする行政や観光協会の意気込みが伝わってきます。


わざわざ東京から行く以上、公開頻度の低い文化財を優先して参観することにしています。本堂と共に、壬生大念佛狂言で知られる狂言堂(重文)内部が冬季初公開されると知っては、見に行かないわけにはいきません。セリフのない無言劇が特徴の壬生狂言は、京都三大念佛狂言のひとつで年に3回開催されます。

狂言堂に入って狭い階段を上ると左手に板敷の狂言舞台が拡がります。さほど広くない空間に様々な仕掛けがあることに気づかされます。能舞台にはない「飛び込み」や「獣台(けものだい)」の説明をして下さる中年女性ボランティアの声に熱気さえ感じました。彼女自身、初めて舞台に足を踏み入れることになって感激の余韻が収まらないのでしょう。雨戸で見所(けんじょ)が遮られているので想像するしかありませんが、鉦と太鼓のカンデンデンが鳴り響けばいよいよ開演です。初番は決まって「炮烙割」、その勇壮な舞台を脳裏で再現してみるのも悪くありません。高く積まれた炮烙が舞台縁から落下する様は豪快で厄が吹き飛ぶのというのも道理です。有名な「鵺」では橋掛かりの前の「獣台」が使われます。こうした特異な演出装置が狂言堂の見どころのひとつです。



そして、狂言堂のもうひとつのハイライトは、伊藤若冲壬生寺に奉納したと伝わる僧形の面でした。内部は撮影不可なので、写真は許可を得て撮影したというトラベルwatchから拝借したものです。今も「道成寺」や「花折」で使用されるそうですから、一度は機会を設けてその舞台を拝んでみたいものです。