新春限定の一保堂「大福茶」を頂く

享保年間に創業した一保堂本店を訪れました。写真のように、江戸時代の茶舗を思わせる佇まいでこげ茶の暖簾が印象的です。頼まれていたさっぱり系の煎茶と、自家用に年末年始限定(11/15〜1/15)の「大福茶(おおぶくちゃ)」を買い求めました。



縁起のいい名前で知られる「大福茶」には有難い由来があります。平安時代、京都で疫病が流行ったとき、空也上人が観音様を乗せた車を牽いて病に苦しむ人々に薬効のあるお茶をふるまったところ、次第に疫病は収まったというものです。その話を聞きつけた村上天皇も召し上がったところから、「皇服茶」とも「王服茶」とも呼ばれるようになったわけです。さらに、招福の願いを込めて「大福茶」に転じたということです。


空也上人ゆかりの六波羅蜜寺では正月三が日に「皇服茶」の接待が行われます。帰京して早速、恩師からお土産に貰った干し柿と共に「大福茶」を頂きました。一保堂ではお茶に何かを混ぜることはなく、唯一の例外がこの「大福茶」なのだそうです。カテゴリーとしては玄米茶ということになりますが、市販の玄米茶よりも茶葉の割合が多いので、茶葉の味わいが勝って絶妙の風味が楽しめます。定番の極上玄米茶よりも上等な茶葉を使った上に、炒りの濃い玄米と薄い玄米が2種類配合されているので、年末年始の飲食で弱った胃腸をやさしく包み込んでくれます。あえて湯呑に梅干しと結び昆布を入れない方が、丹精込めて作られた一保堂の「大福茶」を味わえるというものです。

1年の邪気を払ってくれる新年の門出にふさわしい逸品でした。