ガーゴイルと魔除け


初詣に出掛けると、参拝者のなかに破魔矢や鏑矢を持った人を多く見かけます。どちらも縁起物ですが、あわせ持つ意味は少し異なります。破魔矢には除魔開運のご利益がありますので、我が家はこちらを買い求めます。破魔矢より大振りの鏑矢は、戦闘で最初に放たれる「一番矢」という意味ですから、新成人のように新たなスタートを踏み出す方にふさわしいと云えるでしょう。新年を迎えると、幸先のいいスタートを願って、こうした縁起物を自宅に飾ってみたくなるのが人情というものです。

関西では、魔除けとして玄宗皇帝ゆかりの鍾馗様を屋根に置く風習があります。特に京都市内ではよく見かけます。ヨーロッパにも似たような魔除けが存在します。その代表格はガーゴイルです。ハリー・ポッターに登場するダンブルドア校長室の入口に置かれた石像(写真右)もそのひとつです。


Gargoyleとはヨーロッパの伝承上の怪物のことで、フランス語のガルグイユ(食道・喉の意味)に由来します。雨樋から流れてくる水の排出口(吐水口)に怪物をかたどった彫刻があしらわれているものを指すようです。なかでも、パリのノートルダム大聖堂ガーゴイル像は有名です。こちらは雨樋の体をなしていないので、シメール(ギリシア神話に登場するキマイラ)と呼んだ方が正確かも知れません。シテ島の大聖堂からまるでパリ市街を睥睨しているようです。単なる装飾品ではなく、外敵や悪霊から都市ヤ建物を守る守護者と位置づけられています。ノートルダム大聖堂北側の地上入口から387段の急峻な螺旋階段を上り、北鐘塔を経て、南鐘塔へ足を運ぶとそこはまさにシメールギャラリー。

ほかにも、有名どころでは、北京天壇の龍のガーゴイルサグラダファミリア教会にはヘビやトカゲの姿のガーゴイルが鎮座しています。エクアドルのキトのバシリカ教会にはアリクイのガーゴイルが、スペイン北部のバレンシア大聖堂には、蛇腹カメラを手にしたフロックコート姿のガーゴイルがあります。

魔除け、厄除け、護符(talisman)といったお守りに頼る気持ちが昂る年頭のうりぼうなのでした。