愛用のノーチラス3710/1Aモデル

高級時計と聞いて日本人が真っ先にイメージするのはロレックスではないでしょうか。ロレックスファンには申し訳ないのですが、金無垢のいかにも成金というタイプのロレックスはどうも自分の好みに合いません。

普段使い出来て愛着の湧く時計を求めて、行き着いたのはスイスの名門時計メーカーPATEK PHILIPPEでした(以下、「パテック」)。1851年のロンドン万博でヴィクトリア女王がお買い上げになったことで同社の時計の知名度は不動のものとなりました。爾来、ヴァシュロン・コンスタンタン、オーデマ・ピゲと並んで世界三大高級時計メーカーの一つとなったパテックの時計ですから、おいそれと手が届く価格帯のものはありません。ところが、1976年に12気圧防水のスチール製スポーツウォッチがリリースされました。その名はノーチラス。ケースデザインは潜水艦「ノーチラス号」の舷窓をモチーフとしたスポーティなもので、従来のパテックフィリップのどのモデルよりも大型サイズでした。そして、今年はノーチラス誕生から40年目の節目の年にあたります。

高級時計は小さくて薄いという常識を根底から覆した上に、ステンレススチールという素材を採用したことは、当時の時計界で驚きを以て受け止められました。ノーチラスは、7.5mmという薄さを実現するために2ピース構造を採用しています。時計デザイナーのジェラルド・ジェンタは、オーデマ・ピゲで手掛けたロイヤル・オークのスタイルを(ねじ込み)式のスクリューバック式)をさらに進化させたデザインを考案します。


ノーチラスには両サイドに「耳」(ヒンジ)がついています。べゼルと鍛造ケースという2ピース構造にした上で、両耳を垂直に貫くビス留めをすることで高い防水性を実現しました。こうした背景を知れば、益々ノーチラスの機能美がいとおしく思えてきます。ケースやブレスレットの製造を内製化しているパテックにとって、ステンレスに施される多様なポリッシングは極めて困難なプロセスだったということもノーチラスモデルの付加価値のひとつに数えていいでしょう。表面の艶を消したサテン仕上げと光沢のあるポリッシングのコンビネーションには、使い込むほどに愛着を覚えます。


上の写真はノーチラスの3710/1Aという1998年にリリースされたモデル(2005年生産終了)で、東京のめぼしい時計店を探し回った末にやっと手に入れたものです。そもそも1モデルあたりの製造数が多くて300ピース程度、人気モデルだからといってパテックは安易に増産しないので店頭にあったこと自体が奇跡でした。2006年にリリースされた5711/1A-001(ブルーグラデーション)(写真左)も極めて入手困難だと聞きます。日常的に着用する3710/1Aは、シンプルな3針構造、パワーリザーブインジケーターがついているのでゼンマイの巻き上げ状態を確認することができます。ブラックフェイスにローマ数字という点も気に入っています。普段使いできる珠玉のタイムピースを、beyond generationのキャッチコピーのとおり、世代を超えて自分の子孫にも受け継いでいって欲しいと思っています。