第17回ワシントン条約締結国会議の行方〜激減するアフリカゾウ〜

今月24日からヨハネスブルグで第17回ワシントン条約締結国会議(COP17)が開催されます。附属書改正提案一覧を見ると、哺乳類にはじまり爬虫類や植物に至るまで、62項目もの提案がなされていることが分かります。議論の焦点は、アフリカゾウの密猟を防ぐために象牙を取引する市場をすべて閉鎖するかどうか。市場閉鎖を求める決議案に2/3の賛成が得られれば採択されます。ナミビアジンバブエの2ヵ国がゾウの保全資金確保の観点から象牙の国際取引再開を求めている一方、アフリカ諸国等13ヵ国は、すべてのアフリカゾウを附属書I掲載種にするよう求め国際取引の禁止継続を主張しています。


この3月に訪れたケニアのマサイマラ国立保護区ではアフリカゾウの群れ(数点アップした写真は現地で撮影したものです)を何度も確認することができました。しかし、これはレンジャーやNPOによる組織的保護の賜物であって、アフリカゾウの個体数はこの7年間で約3割減少しているのだそうです。今や、現存する地上最大の動物アフリカゾウですら、国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価で絶滅危惧II類に指定されています。


雄の牙は2メートル以上にまで成長することがあります。地面を掘ったり樹皮を剥いだりと人間の手のように牙を器用に操ります。牙にも右利きと左利きがあるなんてご存知でしょうか。主に使われる牙はマスタータスクと呼ばれます。歯は6回生え替わり、6番目の臼歯が摩耗してしまうと柔らかいものしか食べられなくなり寿命(60〜70才)を迎えます。

雌にも牙があります。

1970年代には100万頭以上いたアフリカゾウは今やその半分以下、この8月に行われた大規模な個体数調査(GEC)で生息が確認されたぼは約35万2千頭に過ぎません。1975年にワシントン条約が発効し、1990年以降、象牙の国際取引が禁止され一時アフリカゾウの生息数は50万頭まで回復したようですが、2005年頃から密猟が増加し対策を迫られているのが現状です。ケニア港湾都市モンバサから密猟象牙の多くは輸出されるようです。世界最大の違法象牙輸入国は中国、こうした需要があるかぎり密猟は根絶やしにはできません。もっと深刻なのはサイです。密猟はとどまるところを知らず、ベトナムではいまだに角が薬用になると信じられており、クロサイは絶滅の危機に瀕しています。


こんな情況を憂えて、10年後もアフリカゾウのいる世界を守りたいと特定非営利活動法人アフリカゾウの涙(Tears of the African Elephant)を設立したのがケニアで代表を務める滝田明日香さん。マサイマラ国立保護区に勤務する獣医さんでもあります。マサイマラ滞在中のロッジで著書を読んで彼女のことを知りました。来る24日には上野動物園で第3回グローバルマーチ(Global March For Elephants & Rhinos)が開催されます。すでに130か国以上に拡がりを見せるこうした草の根運動を通じて、アフリカゾウをはじめ絶滅危惧種を保護する動きが世界で活発になるといいですね。

獣の女医―サバンナを行く

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