を訪ねて〜米国同時多発テロから15年〜

世界を震撼させた2001年9月11日から15年。当時、大手町のオフィスに出社すると、NY世界貿易センタービルに旅客機が突っ込む衝撃的なシーンがディールングルームのモニターに次々と映し出され、呆然と立ち竦んだことを今も鮮明に記憶しています。

それから数年後、出張で「グラウンド・ゼロ」に近い場所にあった再保険会社を訪れたとき、ビジネスパートナーから耳にした凄惨な後日談もずっと脳裏から離れません。そのときですら立入禁止が解かれていない区域がまだかなり残っていました。

テロから15年目の今年、NY滞在中に<9.11 Memorial>を訪れようと決めていました。バッテリーパークから続く遊歩道の真正面にワン・ワールド・トレードセンターが屹立しています。2014年11月に完成したばかりのNYの新たなランドマークです。竣工まで10年近い歳月を要したこと自体が9.11の傷痕の深さを物語っています。犠牲者の4割の遺体が今なお不明なのだそうです。


強い日差しを浴びながら北へ歩を進めると、ほどなく<9.11 Memorial>が現れます。5年前の9月11日に完成したモニュメントには、倒壊したツインタワーの跡地に「サウスプール」と「ノースプール」と呼ばれる2つの巨大な水槽が設けられていて、底部中央の空洞に向かって絶え間なく流水が注いでいます。プールを取り囲むブロンズ板には犠牲者ひとりひとりの名前が刻まれています。その数は、1993年2月の世界貿易センター爆破事件で落命した6名も含めて2983名に達します。日本人犠牲者24名もそのなかに含まれています。救助活動に従事して命を落とした消防士や警察官の方の名前も数多く目にしました。一切の虚飾を排した<9.11 Memorial>は実によく考えられたモニュメントだと思います。その北側に<NATIONAL SEPTEMBER 11 MEMORIAL MUSEUM>があります。

どれだけ時が経ってもあの日を忘れることはないでしょう。残念なことに、その後も世界中でテロが影を潜めることはなく、むしろその勢いを増しているように感じます。世界中から移民を受け容れ今日を築いたアメリカ合衆国が、そのレゾンデートルでもある多様性を否定するベクトルに傾いているように見受けられます。共和党大統領候補トランプ氏は現にイスラム教徒の米国入国禁止政策を掲げています。嫌イスラムの空気が支配的になりつつあること自体、危険な兆候だと言わざるを得ません。

そんなことを考えているうちに、<9.11 Memorial>で日没を迎えることになりました。