尼門跡寺院を訪ねて〜宝鏡寺・霊鑑寺〜


初日は人形寺とも百々御所とも呼ばれる宝鏡寺へ。開山は光厳天皇皇女、寺格は大聖寺に次いで第2位という由緒正しきお寺です。御所人形をはじめ数百体の人形が保存されていて、春は雛飾りを見ることができます。立雛、古今雛、有職雛などはここでしか拝むことはできません。幼くして出家した皇女らが淋しさを紛らわすために貝合わせに興じたのでしょうか、人形の前にも爪先ほどの大きさの稚貝が並べられていて、よく見るとちゃんと和歌が刻まれています。宝鏡寺の東には表千家裏千家の邸宅や茶室が拡がり、付近をしばらく散策してから宿泊先へ向かいました。

3日目は、若王子橋から哲学の道をしばらく歩いて霊鑑寺(谷の御所)へ。1654年に後水尾天皇の皇女が得度入寺、以来明治維新まで5人の皇女皇孫が入寺したそうです。こちらも春と秋それぞれ2週間しか拝観するチャンスがありません。春は何と云っても庭内に今が盛りと咲き誇る椿が見頃、70種、150本あまりの椿が一堂に観られるのはここだけでしょう。

京都滞在中に京都新聞を開くと、創建当初から境内にある日光椿(じっこうつばき)に関する記事に目が留まりました。

日光椿は一重の小さな椿ですが、中の蕊が花びらのように盛り上がったいわゆる唐子咲きといわれるつばきのことです(写真をご覧ください)。白い唐子弁の月光(がっこう)椿という種も見かけました。

後水尾天皇も愛でたというこの日光椿(京都市指定天然記念物)がお世話の甲斐なく枯死、ところが3メートル離れた場所にある日光椿と根で繋がっていることが分かりDNA鑑定したところ枯死した日光椿と同一だと判明したのだそうです。植物の命も永遠ではありませんが、命はこうして繋がっていくのですね。京都の春のランドマークのひとつ円山公園祇園枝垂桜も二代目、初代の種子が大切に育てられたからです。すでに三代目もしっかり育てられているのだそうです。

ボランティアガイドの方に聞くと今年は少し早く椿が咲いたせいで落花する種もある一方、この時期つぼみの黒椿が咲いてくれたということでした。ヴィンテージワインのような色合いの花弁が実に印象的でした。気がつくと、受付終了の16時を回ってしまいました。年によって開花の時期が異なるので、次回訪れる楽しみがありますね。