大津地裁が稼働中の高浜原発の運転停止を命じる

東日本大震災から明日で5年が経ちます。その日を目前にして、大津地裁関西電力に対して稼働中の高浜原発2基の運転を差止める仮処分決定を下しました。隣県の滋賀住民が訴えを起こしていたのですね。稼働中の原発に対して初めての司法判断となります。関電は決定取消を求めて争う構えなので覆される可能性は十分ありますが・・・。

朝日新聞が社会面で珍しく裁判長山本善彦氏(61)の経歴を紹介しています。政府与党が原発再稼働に積極的ですから、行政と真っ向から対峙する決定を下した裁判官の英断と勇気に心底感服します。最高裁が露骨にこの裁判長を人事異動させないことを祈ります。弁護団長は志賀原発2号機運転差し止め判決を金沢地裁で言い渡した元裁判官の井戸謙一氏、きっと安全性という争点をめぐって緻密な論証をなさったに違いありません。

福井県知事は「(原発が)何度も止まったり動いたりする状況を繰り返すには遺憾」とコメントしているようですが、地裁ごとに判断にばらつきがあること自体が原発の安全性に確信がもてないことの表れに他なりません。全国で22基が再稼働を求めて新基準下で審査中といいますから、脱原発の流れは劣勢と見ていいでしょう。それにしても、東日本大震災から5年も経つと、福島原発を襲った津波が全電源喪失という想定外の事態をもたらした記憶はかくも風化してしまうのでしょうか、本決定が新規制基準の内容にまで踏み込んで「危険性を見落としている可能性がある」と指摘した点を重く見て、政府は今一度基準を再考すべきではないでしょうか。「福島の事故原因究明も道半ばだ」という指摘も至極尤もな気がします。