レオシュ・ヤナーチェクのオペラ「イェヌーファ」@新国立劇場


同級生のお誘いに甘えて、午後から日本で上映されることの珍しいヤナーチェクのオペラ(ゲネプロ)を観ることに。村上春樹の『1Q84』で一躍有名になった感のあるヤナーチェクチェコ出身の作曲家。オペラ通の日本人でも「イェヌーファ」を舞台で観たことがある人は、かなりの少数派だと断言できます

今回の上演は新国立では初めて、母語チェコ語の上演ともなれば国内でも数えるほどなのだそうです。2012年にベルリン・ドイツ・オペラで初演されて絶賛を博したというプロダクションで初演時の主演キャストを招聘しての日本初公演となれば、ゲネプロとは云えキャストは本番宛らの緊張感を強いられたに違いありません。

一幕目ではチェコモラヴィア地方を舞台に村人に扮した日本人キャストが大勢登場し、本場のソロ歌手との掛け合いが繰り広げられるのですが、正直なところ、最後まで大味な印象が拭い切れませんでした。オペラグラスを通してその他大勢の佇まいを仔細に観察すると、棒立ちに近いキャストが目につきました。ミュージカル同様、声楽もさることながら自然な動きを心掛けて欲しいものです。チェコ民族音楽への造詣を血肉化した作品と標榜するなら、舞台衣装もひと工夫あって然るべきです。昭和のサラリーマンやOLを思わせる村人の姿に違和感大でした。

ところが、インターミッション後の2幕、終幕と進むと尻上がりに締まってきて、最初のネガティブな印象は雲散霧消することに・・・。ホワイトキューブを連想させる白一色のシンプルな舞台装置が、複雑な人間関係の織りなす愛憎劇を却って浮き彫りにさせてくれます(ミラノスカラ座のドンカルロの舞台を彷彿させます)。静かに背景のパティションを移動させて舞台の微妙な空気の変化を演出させてみせるなど、現代的なアレンジにとりわけ感心しました。辛口批評は簡単ですが、考えてみれば、日本人キャストもチェコ語は初挑戦、楽曲も聞き慣れない旋律とくれば、舞台の役作りは後回しになりますよね。伝統とは初演から回を重ねることで円熟味を増して形造られるもの、本ゲネプロ上演はチャレンジ精神に富む舞台だった総括しておきます。