「マイナス金利政策」の副作用について考える

1月29日の最終営業日に日銀黒田丸は、国会でも「(マイナス金利は)検討していないし、考えが変わることもない」と発言していながら、我が国では前例のない「マイナス金利」の導入に踏み切りました。政策委員9名の合議による政策決定会合では5対4という薄氷決定でした。金融政策には嘘はツキモノと云われますが、株式市場は「マイナス金利」の評価をめぐって混乱したのでしょう、後場、乱高下の展開となりました。黒田流サプライズの演出には成功したものの、政策効果の見極めには時間が掛かりそうです。先行したECBに対しては、通貨安競争に拍車がかかることも予想されます。

黒田総裁は原油価格の下落を理由に物価目標の達成時期を先送りしましたが、目標達成は遠のくばかりとの印象が拭いきれません。国債の買入が限界に近づいていることを自ら表白した格好で、日銀金融政策の手詰まり感が却って露呈したようにも感じます。

市中銀行は余ったおカネを日銀に預けると金利(2/16から0.1%)を徴収されることになりますから、そうならないように貸出を増やす必要があります。ところが、90年代のバブル崩壊後、依然として旺盛な貸出需要は低調なままです。とすれば、金融機関はこぞって国債を買うことになり、日銀の思惑通り、市中に資金が還流されるとは限りません。

翻って、預金金利に頼る年金生活者の暮らしは、地を這うような金利のせいで、楽になるはずもありません。メガバンクの株価も大幅に下落し、大手資産運用会社が国債などで運用する投資信託MMFの募集停止が相次いでいます。国債金利が0.10%を割り込み、足元、0.80%で推移していいるからです。銀行経営に与える影響は計り知れません。

住宅ローンの金利が下がるというようなメリットよりも副作用の方が気になる「マイナス金利」の導入、今後の成り行きから目が離せません。