2015年11月吉例顔見世大歌舞伎《夜の部》〜堀越勸玄(ほりこしかんげん)くん初お目見得〜

市川宗家の後継者、堀越勸玄くん(2歳7か月)が初お目見得ということで、数カ月ぶりに歌舞伎座に足を運びました。将来は14代目の團十郎ですから、歌舞伎界挙げての祝福というわけです。先月、チケットを手配したときには、花道周辺から後方席まで大方が満席。観客席の埋まり具合からも贔屓筋の熱気を感じた次第です。父親海老蔵さんの初お目見得は5歳のときでしたから、勸玄くんのそれはずいぶん早いのに驚かされます。勘三郎さんや坂東三津五郎さんが相次いで他界しましたから、将来の團十郎に寄せられる期待は極めて大きいのでしょう。


十一世市川團十郎(勸玄くんはひ孫にあたります)五十年祭と銘打った11月大歌舞伎《夜の部》は、「江戸花成田面影(えどのはななりたのおもかげ)」という舞踊で幕を開けました。芸者や鳶(とび)頭たちの華やかな踊りの後、花道から海老蔵さんに手を引かれて、黒い紋付き羽織はかま姿の勸玄君が登場すると、客席からは万雷の拍手。

舞台で勸玄君が「堀越勸玄にござりまする」と高い声で名乗り、続いて、海老蔵さんが「ごひいき、ご指導、ご鞭撻(べんたつ)のほどをひとえにお願い申し上げ、奉りますーる」と挨拶(あいさつ)すると、客席から「勸玄くーん」「成田屋!」と相次いで掛け声がかかりました。最後は、芸者お藤役の坂田藤十郎さんの「お手を拝借」のかけ声と共に、手締めで幕となりました。

代々、血縁で繋がれていく梨園において、初お目見得ほど祝福される舞台はありません。一方、男子として生まれ落ちた瞬間から、歌舞伎役者として精進を重ね、親の名跡を継いでいく宿命を背負うわけです。ある意味、本人にとってその人生は束縛された窮屈なものなのかも知れません。

今をときめく十一代目海老蔵さんでさえ、幼少時から続く厳しい稽古と家柄・伝統の重責に耐え切れず反発を繰り返していたといいます。そうした常人には想像も及ばない試練を乗り越えて、芸道を極める歌舞伎役者に、人々は喝采を贈り、抗い難い魅力を感じるのです。