ルーブル美術館展@国立新美術館

会期も残り1か月を切ったので、昨日開館時刻めがけて国立新美術館に飛び込み「ルーブル美術館展」を観てきました。

会場入口には既に150人余りの行列ができていました。10分前から展示スペースへの誘導が始まったので、入口付近を通り過ぎると来館者がばらけ落ち着いて鑑賞することができました。常々思うのですが、入場料を数倍にしてもらって構わないので、来館者数(或は鑑賞時間)に制限をつけたプレミアチケットの発売を切に希望します。

音声ガイドの普及も功罪相半ばですね。目玉作品の前で来館者が長時間立ち止るため、却って混雑に拍車がかかります。おまけに、今回はお子様向けに名探偵コナンが案内役のジュニアガイドも提供されているので、児童生徒も当然立ち止ります・・・何とかならないものでしょうか。フェルメール作品の前だけは、立ち止れない前列に加えもうひとつ柵を設けて遠巻きに長時間立ち止まって鑑賞できるよう工夫が凝らされていました。考えましたね、いいアイディアだと思います。

日本人はフェルメールが大好き(かくいう自分も例外ではありません)。《天文学者》初来日ということで、連日大賑わいなのでしょう。パリ出張時、夜間開放日を狙ってルーブルを訪れ、よくフェルメールをはじめとする名画を駆け足で観ましたが、混雑は皆無でした。ルーブル所蔵のもう1点《レースを編む女》もじっくり鑑賞できた記憶があります。ルーブルには大作が多く、フェルメールのような小品が大作に紛れて、望外の鑑賞機会が確保されるというわけです。


今回の展示作品は83点とかなり少な目、十分なスペースをとって陳列してあったので好感がもてました。大混雑のなかで200点見せられるよりよっぽど有難いです。風俗画というジャンルに的を絞ったのも奏効しています。宗教心の乏しい日本人にとって、風俗画(genre paintings)というジャンルを見下すように屹立する宗教画や歴史画或は肖像画は、ともすれば退屈なだけです。寧ろ、日常生活に即した風俗画という切り口で30数万点とも云われるルーブル所蔵品のなかから、珠玉の風俗画を選び抜いてきた今回の企画展は高く評価できます。展示パネルを紅殻色やブルーに変えたのもルーブルやオルセーの現地展示を意識してのものでしょうか、展示環境が華やいで見えました。

作品群のなかでは、マセイスの《両替商とその妻》、《コローのアトリエ》、第VI章のアトリエの芸術家と題する展示が楽しめました。特に《両替商とその妻》には小道具が精緻に描かれており、ヤン・ファン・エイクの《アルノルフィーニ夫妻像》にも登場する凸面鏡と妻の流し目に見入ってしまいました。

会期は6月1日まで。その後、京都へと巡回します。ルーブルは半年も《天文学者》や《両替商とその妻》不在で大丈夫なのだろうかと余計な心配が頭をよぎりました。