原油安の行方

昨夜、近所のガソンリンスタンドに立ち寄って給油したら、ハイオクは137円でした。近年、記憶にない安値であることは確かです。折しも、今日のNHKクローズアップ現代」が取り上げたテーマは原油安。30分足らずの番組だった上にゲストコメンテーターがお粗末だったので、食い足らない部分を整理してみようと思います。

原油を中心とする資源を求めて戦争を繰り返し大敗北を喫した我が日本国にしてみれば、原油安は諸手を挙げて歓迎のはずなのに、原油安が世界経済を翻弄し株安を牽引する一因にもなっています。

昨年11月27日、ウィーンで開催されたOPEC総会で日量3000万バレルの生産枠維持が決まりました。減産という切り札がありながら敢えてこのカードを切らなかったのは何故か?身を切るようなこの決定の背後には、シェール革命に湧く米国が最大の原油輸出国に転じる途を封じ込める意図が看てとれます。OPECがシェール潰しに出たと云ってもいいでしょう。シェールガスの掘削コストは50ドル、中東産油国の倍以上のコストは原油価格が高値安定してこそ正当化されるのであって、テキサスの開発業者は悲鳴を上げているようです。ランドリグを6基から1基に減らす様子をNHKは報じていました。

OPECは臥薪嘗胆を選ぶとしても、最大の石油輸出国はサウジアラビアをかわしてなおロシアなのです。原油安でルーブルが暴落し、ロシアがデフォルトした1998年以降最大の下げ幅を記録しています。オバマ大統領は、エボラ出血熱イスラム国と並べて第2の欧州危機と呼んでいます。下落したルーブルの影響は旅行業界にも深刻な影響を及ぼしているそうです。加えて、ロシアではルーブル以外の通貨で住宅ローンを利用している人も少なくありません。自国通貨の暴落が市民生活を直撃しているのです。

再びデフォルトするかも知れないロシア国債を抱えているのはユーロの優等生ドイツやフランスです。ロシア向けのビジネスも大打撃でしょう。結果、ユーロ圏の経済成長率を鈍化を招く虞が大なのです。

そして、今日、日銀政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は15年度物価見通しを1.7%から1%に引き下げた理由に言及し、エネルギー価格の下落を反映したと説明しました。原油安は日本にとって恩恵をもたらすという主張はどうやら危うい按配になってきました。兵力の逐次投入をしないはずの黒田総裁に残された手段は追加緩和第二弾しかないようです。

いつ下げ止まるのか?、世界経済を翻弄する原油安の行方から目が離せません。