アントニオ・ガウディ or アントニ・ガウディ

森アーツセンターギャラリーで開催中の<建築家ガウディX漫画家井上雄彦>展を観てきました。ガウディと『SLAM DUNK』や『リアル』の作者の異色コラボ展、興味本位でしたが覗いて正解でした。

会期は9/7(日)まで、あと僅かで閉会ですのでガウディファンはお見逃しなく。ガウディの卒業制作(課題設計)をはじめとする貴重な資料を通じて、異形のサグラダ・ファミリア聖堂へと連なるガウディの足跡をたどることができます。

こうしたオーソドックスな展示もさることながら、会場内には様々な工夫が凝らされていて退屈しませんでした。入口を抜けるとガウディの代表作をシアター映像で楽しむ仕掛けがあります。3面大型スクリーンで見るガウディ建築は圧巻です。床にはバルセロナの鳥瞰風景が拡がります。展示スペースへ移動すると、トランカディスと呼ばれる六角形の破砕タイルが敷き詰めてあります。さらに歩を進めると、壁や床に井上さん作画がプロジェクションマッピングされていて視覚的にも楽しめます。

ガウディが拵えた優美な椅子(レプリカ)に座ってひと息ついた後は、天井からぶら下がったシャンデリア風の鎖を仰ぎ見ることに。ガウディの得意とする放物線アーチが重力による自然の造形美を逆手にとったものであることが分かります。一見、作為に満ちたガウディのデザインは実は動物や植物が形づくる自然の意匠に基づいているというわけです。自然に対する畏敬の念がガウディ建築を読み解くカギのひとつかも知れません。

今回の展覧会ではカタルーニャ表記に従ってアントニ・ガウディに統一されていました(グエルはグエイということになります)。スペイン語表記を避けたのはガウディのカタルーニャ愛を尊重したからでしょうか。スペインの自治カタルーニャでは、スペインからの独立の是非をめぐって今まさに住民投票が行われようとしています。独自の文化と歴史を有するカタルーニャの風土がガウディを育んだことを忘れてはいけませんね。

サグラダ・ファミリア聖堂はガウディ没後100年にあたる2026年に完成するそうです。12年後、バルセロナを訪れないわけにはいきません。バルセロナオリンピック閉幕後の1992年秋に訪れて以来の再訪を是非実現したいと思っています。添付の写真はそのとき買ったグエル公園のドラゴンの置物です。