「栄西と建仁寺」展は見応え十分でした!

今年は開山・栄西禅師800年遠忌にあたり、東博(平成館)で特別展「栄西建仁寺」が開催されています(〜5/18まで)。先週末、見逃してはならじと上野に出掛けました。

五山文学の担い手となる学僧を輩出した建仁寺は、五山第三位の寺格を誇る名刹だけあって、今回の特別展には惚れ惚れするような寺宝が数多く出展されていました。「学問面」と称される所以ですね。京都を代表する禅寺が、大本山としての本来の役割に加え、学術・文藝の拠点としても重要な役割を果たしていたことが分かります。

特別展の目玉は俵屋宗達作「風神雷神図屏風」(国宝)、ようやく本物と対面することができました。というのも、現在、建仁寺本坊正面入口に飾られている「風神雷神図」が<綴プロジェクト(キャノンと京都文化協会の共同プロジェクト)>に基づいて製作された高精細複製品だからです。もうひとつの目玉、海北友松作の「雲龍図」(もともとは襖絵)も同様です。

本物と向き合ってみて、現地で見た高精細複製品の出来栄えに却って感心させられた次第です。「風神雷神図屏風」(国宝)の作品番号は183、展覧会の掉尾を飾っているので最後に対面することになります。

今回の特別展、第1章から第4章までじっくり鑑賞していると優に2時間は必要です。休憩なしで鑑賞したりすると、疲れを感じてそのまま家路を急ぐ人も多いのかも知れません。でも、もうひと踏ん張りして、平成館を出たら本館2Fにも足を運びましょう。そこには、尾形光琳作「風神雷神図屏風」(重文)が同時公開されています(6年ぶりだそうです)。宗達に影響を受けて描かれた作品だけに、比較鑑賞できるチャンスを逃す手はありません。

全体を通して見応え十分の展覧会だったと思います。展示手法においても随所に工夫が凝らされていました。特に、黒のパネルを背景にして「四頭茶会」の空間を再現し、同時に実際の茶会の様子をプロジェクターで流すという展示が印象に残りました。開山栄西ゆかりの茶礼を冒頭にディスプレイするあたり、心憎い演出です。黒のパネルで仕切った退耕行勇坐像をはじめとする坐像展示も、下方からのLED照明と相俟って視覚効果抜群でした。ほかにも、栄西筆「喫茶養生記」や若冲の「雪梅雄鶏図」など見所満載です。

ちなみに音声ガイドのナビゲーターは中谷美紀さん、大好きな女優さんなので躊躇なく機具を借りました。期待に違わず素敵なガイドぶりでした。