妻がはまった英国アンティーク銀器の魅力

思えば、昨年、ロンドンから届いたビスケットジャーがすべての始まりでした。元々テーブルウェアやカトラリーの類いが好きだった家内が偶然見つけたサイトで注文したのが、このMappin & Webb社製ビスケットジャーだったのです。梱包を解いて現れたのは本当に美しい銀器でした。家内が魅せられるのも無理はありません。製作年代はシルバープレートなので推定するしかないのですが、ヴィクトリア後期のようです。

こうしたテーブルウェアは、それまで貴族社会のものだった英国紅茶文化が次第に中産階級にも普及し始めたジョージアン(1714〜1837)に遡り、ヴィクトリアン前後期(1837〜1870・1871〜1900)にかけて円熟期を迎えます。ティーポットからティースプーンに至るまで実に様々なテーブルウェアがこの時期に生み出されました。とりわけ、華麗な装飾が施されたティーキャディやキャディスプーンはコレクションアイテム化しており、程度のいい品だとコレクターの間で熾烈な争奪戦が繰り広げられます。値段も吃驚するくらい高価です。今から100年以上前のアンティークといいながら、モノグラムの入った品も散見され、美品の多いのが特長です。大切に扱われ世代を超えて承継されてきた証に他なりません。

家内はネットで気に入ったアンティーク銀器が見つかると注文したり、近頃は都内でアンティークシルバー製品を専門に扱うリアル店舗に出掛けたりしています。最近入手したエッグクルエのハンドルにはタッセルがついているので、このクルエで半熟玉子が供されると朝の食卓が一気に華やいだ感じがします。

お正月休みにはジョージアンの見事な純銀ブレッドバスケットを見つけたので、家内と相談の上、買い求めることにしました。女性は、ティスプーンに限らずバスケットやフルーツコンポートもピアッシングの入ったものを好むようですが、自分は寧ろ装飾は控えめなこのブレッドバスケットをとても気に入っています。ジョージアンの雰囲気を伝える打ち出しのフルートに自然光が反射すると特別の輝きを放ちます。ほれぼれするような美しさです。

舟形のシンプルなデザインのブレッドバスケットにハムサンドを盛って、ティーカップからベルガモットの香りが漂ってきたら、究極の朝食タイムです。