金価格暴落はドル信認の証しなのか?

アベノミクスによって長く続いた円高基調が修正され、米ドルが100円台を回復し輸出関連企業の業績が急回復しています。その蔭で商品相場が崩れはじめ、これまで一本調子で上昇し続けてきた金価格も昨年末あたりから一転急落し歯止めがかからない状況です。グレート・ローテーションと呼ばれる資金大移動が進行していると指摘する声も少なくありません。

金相場の異変は何を意味するのでしょうか。金価格は1トロイオンス(約31.1グラム)あたり幾らと米ドル建てで表示されるので、円で金地金を購入した場合、金相場だけではなく為替相場の影響を強く受けることになります。安部政権発足後俄かに米ドル高となったので、金価格急落による損失が米ドル高によってある程度オフセットされ、金保有に伴う損失拡大に気づかない投資家も少なくないように思います。

実際には、金価格はこの半年で30%以上暴落しています。原油、貴金属、農産物等19品目から構成されるCRB指数も直近9ヶ月で15%下落しています。商品相場の専門家のなかには、商品相場の一時的調整ではなく数十年にわたった価格上昇局面の終焉だと指摘する人もいます。

米国経済はケース•シラー住宅価格指数等インディケーターから見るかぎり比較的堅調で、金融当局がリーマンショック以降継続してきた量的緩和策を年末にかけて縮小する方針を打ち出しています。見方によっては金価格下落はドル信認の証しと言えなくもありません。

しかし、世界最大のエネルギー消費国である中国や新興国の景気の減速ぶりを目の当たりにすると、米経済の復調が確かなものか疑わしい気がしてきます。中国の統計数値はまったくあてにならないので、シャドーバンキング頼みの中国経済の実態は公表値以上に深刻かも知れません。選択的デフォルトを意味するSDにされたキプロス保有する金を売却すると云われています。強いドルの復権は総論賛成ですが、足元の商品相場の波乱は米国経済の復調に暗い影を落としているよう思えてなりません。