狩野山楽・山雪展@京都国立博物館

[:W200]12日(日)が会期最終日。直前まで宿泊予約が儘ならず世紀の特別展を危うく見逃すところでしたが、定宿八瀬離宮の担当者が無理を聞いてくれて土日と連泊が叶い、先週末京都に出掛けることができました。

宿泊先で入手したA4見開きのパンフには、<京都1会場のみ、39日間だけの限定展覧会。史上初の大回顧展をお見逃しなくご覧下さい>とありました。美術ファン心理をくすぐるには十分すぎるキャッチコピーですね。

狩野派の始祖は室町幕府の御用絵師となった狩野正信。狩野派は信長や秀吉など時の権力者に重用され、障壁画等を手掛ける比類なき専門画家集団へと変貌と遂げていきます。江戸幕府の治政となって、深幽が江戸を拠点に活動したのに対し、山楽は京都にとどまって独自の作風を築き上げていったので、「京狩野」と呼ばれます。

山楽は豊臣秀吉の家臣に連なる出自ゆえに迫害され一時身を隠しますが、九条家の庇護を受けて画才を開花させていきます。山雪はその後継者にあたります。江戸狩野の豪壮な画風を継承しつつ、「京狩野」は樹木や山河といった自然の細密描写に巧みな技倆を発揮することになります。

[:W220]今回の特別展の目玉は、以前、東博の「妙心寺展」で観たことのある「老梅図襖」(メトロポリタン美術館)と「群仙図襖」(ミネアポリス美術館)。妙心寺塔頭・天祥院にあった襖絵表裏の50年ぶりの里帰りだそうです。表裏の襖絵が何故離れ離れになり海を渡ったのか定かではありませんが、山雪の傑作に目をつけた異邦人の眼力には心底敬服します。方丈再建のためやむなく妙心寺はこの襖(八面)を手放したそうですが・・・海を渡ってしまうとは実に勿体ないことをしましたね。襖に息づく老梅は<さながら身もだえしのたうちまわる巨大な蟠龍>(美術史家辻惟雄氏)の如しです。垂直・水平を強調した画面構成は見事というほかありません。「群仙図襖」も金地を背景に9人の仙人と童子ひとりがのびのびと描かれています。背景の松や人物配置のバランスが絶妙です。山楽・山雪研究で知られる土居次義氏の調査ノートに入念に描かれた群仙図のスケッチも愉しめました。

ほかに印象に残ったのは鮮やか極まる彩色の「長恨歌図巻」(アイルランドのチェスター・ビーティー・ライブラリィ)、そして展示の掉尾を飾る「雪汀水禽図屏風」でした。波紋の上に銀泥を施した波の描写が記憶に永く残るでしょう。伊藤若冲や曽我蕭白に多大な影響を与えたといわれる山雪の真骨頂に迫る素晴らしい展覧会でした。

39日間にわたる夢の企画に間に合って、至福の時間を味わうことができました。