イヤホンガイドの功罪@歌舞伎座

昨夜は4/2に開場したばかりの歌舞伎座に出掛け柿葺落公演を堪能してきました。演目は佐々木盛綱・高綱兄弟が敵味方に分かれて争う戦さを題材にした「盛綱陣屋」と歌舞伎十八番の「勧進帳」、いずれも武士道と人情が交錯する柿葺落にふさわしい舞台でした。

「盛綱陣屋」は初めての演目だったので、デジタル化された新型イヤホンガイドをレンタルして観劇することにしました。操作は簡単な上に音質もクリアなのでハード的には申し分ありませんでした。

ただ、今回、演目によってイヤホンガイドの案内役が異なり説明進行のスタイルに随分差があることに気づきました。「盛綱陣屋」のガイドは元アナウンサーの松下かほるさん、折り目正しく着かず離れずの解説は至れり尽くせりなのですが、やや過剰気味、台詞や立ち回りに集中できない場面がありました。一方、「勧進帳」の担当は声色からもベテランと分かる小山観翁さん、解説はどちらかといえばピンポイント型、ここぞという場面で蘊蓄を交えた熱の籠った説明が入ります。劈頭の安宅の関の佇まいや、後半、富樫の許しを得て安宅の関を越えた義経一行が安堵し義経が弁慶に労いの言葉をかける場面の背景描写は実に巧みで、いい意味で想像力が喚起されました。自分には小山さんのスタイルが合っているようです。

功罪はあるにせよ、たくさんの演目に親しむにはイヤホンガイドは欠かせません。新歌舞伎座では字幕解説も登場しています。以前、メトロポリタン歌劇場で重宝した記憶があります。歌舞伎座でもようやく導入されたというわけです。常備ではありませんが、こちらもいずれ試してみたいと思っています。