欧米15金融機関の格下げ

21日、ムーディーズが欧米主要金融機関の格下げを発表しました。モルガンスタンレーが2段階の格下げにとどまるなど予想より穏当な結果だったところもあり、市場では一部に安堵感が広がっているようです。

以前勤務していたスイス系金融機関が往時欧米3格付機関からトリプルAを取得していたことを思うと、隔世の感があります。当時、9A(Triple A X 3)を維持するために、くだんの銀行は邦貨換算で数百億円に上る莫大なコストを惜しまず投下していました。というのも、AAA/Aaaが保持出来ていれば極めて有利な条件で資金調達が可能だからです。

今回の格下げでかつて最強と目されていたドイツ銀行やスイス勢2行でさえA2という不甲斐ない格付水準にまで落ちてしまいました。スワップ市場や資金調達市場では格付けが低下した銀行は、場合によってはmargin callと呼ばれる追加担保差入れ義務を履行しなければならなくなります。リーマン破綻以降、格付けに対する信頼は著しく揺らいだとはいえ、外部格付けの変更が市場に与えるインパクトは今も決して小さくありません。

最近、SMBC日興や三菱東京UFJが相次いでG-SIFIs(Global Systematically Important FIs)の発行する普通社債や期限付き劣後債を投資対象とするファンドを立ち上げようとしています。金融システム上重要と看做される29行のうち15行が平均して2段階格下げされ、多くはクレジット・ウオッチが解除されていないにもかかわらずです。ファンドはさらに信用力が低下する可能性の高い債券を適正な価格で仕入れることが出来るのでしょうか。機関投資家が個人にリスク移転するための格好の受け皿にならないことを祈ります。