旅立ちの春

次男が第一志望の医大に合格し、4月からは親元を離れて一人暮らしを始めることになりました。親としては国公立の合格発表に先立って合格通知を頂いた都内私立医大への進学にも未練を感じながら、本人の希望を尊重しかわいい子には旅をさせることにしたところです。

この二週間余り、住まい探しや新生活の準備やらで親もてんやわんや。これまで立ち寄りさえしなかったニトリには大変お世話になりました。休日のニトリは新生活準備に大童の新入生やフレッシュマンで溢れ、レジは大型ワゴンを引いた来店客で大混雑でした。家電品以外の家具や寝具、こまごまとした生活グッズはニトリでワンストップショッピング可能です。永住を前提にクオリティを追求する暮らしとは一線を画したシンプルライフを目指すのであれば、ニトリは悪くありません。

自分が昭和50年代に下宿暮しを始めた頃、風呂やトイレを完備したワンルームというライフスタイルは存在しませんでした。松本零士さんが描いた『男おいどん』の四畳半下宿暮らしが当時のスタンダードだったように思います。隣部屋から話し声や鼾が聞こえるのは当たり前、プライバシーなどありませんでした。風呂桶片手の銭湯通いも懐かしい思い出です、時を経て、こうした倹しい暮らしは今やすっかり過去のものとなり、親の世代からすれば隔世の感さえあります。羨ましいほど豊かでインディペンデントなスチューデントライフが眩しく見える一方、代わりに懐まで入り込むような過剰な人付き合いが消えた喪失感は大きいように思います。これから6年間を過ごすキャンパスライフ、息子には、豊かな独り暮らしに安易に埋没しないで、同級生のみならず先輩や後輩含めた人との繋がりを大切にして欲しいと願っています。

<行く春や鳥啼魚の目は泪>、旅立つ者にも旅立ちを見送る者にも万感胸に迫る別離の春がもうすぐやってきます。