2012 New Year Party at Tokugawa Village (2)

貴族(華族)制度が廃止された久しい現在、日本では住み込みのお手伝いさんがいる家庭は極めて珍しいのではないでしょうか。ところが、小さなお子さんを抱えたM君のところには普段はAu Pair(オペア)と呼ばれる住み込みのお手伝いさんがいます。生憎、お正月は不在のようでした。耳慣れないオペアという言葉は英語の辞書にもちゃんと載っていて<家事を手伝う代わりに部屋を提供され英語学習の便宜を与えられた外国人女性>ということになります。家政婦と云えばミタさんのように経験豊富な熟達のご婦人を想像するわけですが、M君のオペアガールは19歳のフランス人だそうです。うら若きフランス乙女にゴミ出しをはじめ煩雑な家事一般がこなせるのかいなと余計な心配が頭をもたげてくるのでした。

そんなわけで昼食の準備はこれからです。前後に開閉するドア(移動に便利!)で仕切られた独立キッチン内部を仔細に観察してみると、調理器具は最低限しか揃っていない上に使った形跡が見られません。オペアガールはどうやら料理は不得手のようです。そうこうしているうちに家族連れのゲスト4人も到着したのでランチの支度を急がねばなりません。M君の指示を聞きながら大量のじゃがいもを茹でることに。M君はくだんの大きな缶詰を開けて中身を皿に並べていきます。ラベルにはConfit de Canard(ペリゴール産)とあったのでようやくメニューに合点がいきました。鴨のコンフィ・・・・初めて厨房に立つのに大丈夫?と尋ねるとペーパーバック(仏語)にレシピが書いてあるから大丈夫と笑顔で応えるので、念のために写真だけでも確認しようと思い覗き込んだところそこには写真は一切ありません。思わず天を仰ぎました。

M君が最初に茹でたじゃがいもは火の通りが十分ではなかったので2回目はしっかり茹でて、水揚げしてからスライスしM君の指示を待つことに。缶詰には大量のグラ(gras)が入っています。その鴨の脂を使ってスライスしたじゃがいもを大蒜と共にフライパンで炒めます。M君もグラを取り除いた鴨を2つのフライパンでじっくりと中火で加熱、フライ返しは必要ないそうです。火が通ったところでじゃがいもと鴨をオーブンに入れて保温すること30分余り、ようやくメインデッシュが出来上がりました。残念だったのは、日本製食卓塩しかなかったこととじゃがいもが型崩れしにくい黄金芋ではなかったこと。

格闘すること2時間余り、食卓には鴨のコンフィとホワイトグースのフォアグラが並び、ラングドック=ルーション地方の風味の強いペイドックがふるまわれました。さすがフランス人、ワインセレクションには抜かりがありません。もともといい塩梅でハーブと塩が刷り込まれていたせいでしょうか、コンフィは上等に仕上がっていて結構いいお味でした。パリ土産にコンフィ缶を持ち帰るグルメも多いと聞きます。M君宅の在庫を譲って貰って自宅で挑戦してみようと思います。想定外の日仏共同作戦、思わぬ成功にほっと胸を撫で下ろした1日でした。