美術品国家補償制度の適用第1号

今年6月1日に施行された<展覧会における美術品損害の補償に関する法律>の適用第1号が10月から西洋美術館で開催される「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」展に決まったことをニュースで知りました。当該法律制定の背景には、新興国での美術品への関心の高まりに伴う美術品の評価額の上昇や、テロや自然災害に伴う展覧会における美術品の保険料の高騰、景気悪化に伴い展覧会の規模が縮小していること等様々な理由が挙げられています。具体的には政府が主催者と補償契約を締結し、万一、主催者が借り受けた美術品に損害が生じれば補償要件を充足することを条件に政府が補償上限額950億円(同法施行令第1条)まで補償をすることになります。国立国会図書館のIssue Brief 691号(2010.11.16)に依れば、過去展覧会を支えてきた百貨店系美術館の相次ぐ閉館に加え、マスコミの支援活動も撤退・縮小を余儀なくされていることが、結果的に国家補償制度創設への道筋をつけることになったようです。通常損害は50億円まで、地震やテロの場合には1億円までが主催者負担になったので随分保険料負担が軽減されたことになります。天災地変リスクが高まるなか、欧米各国に遅れたとはいうものの、いいタイミングで補償制度が施行されたと云えそうです。http://www2u.biglobe.ne.jp/~masayama/My%20Pictures/goya-hadakanomaya.jpg