学芸員資格講座余話(2)

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/4a/cc1b8f65f6ff7475df06dd815fc6339f.jpg一昨日、博物館実習のレポートを仕上げ集配局に出向いて投函してきました。締切の22日まで少し間はあったものの、担当講師がメール送付も速達送付も受け付けないため安全を見て昨日投函したというわけです。教育概論のレポート提出がWASEDA-net Portal上の添付メール送信で済んだのに比べ、今回は少々手間が掛かりました。教育概論の場合には大学事務局が添付ファイルの出力を代行し担当講師の元にまとめて郵送したようです。150名余りの受講生のレポートを読まされる講師の立場に身を置けば、PC上の添付レポートよりもアウトプリントで読む方が効率的なことは明らかです。メールは便利なツールに違いないものの論文やレポートは紙媒体で読む人が今も多数派ではないでしょうか。こうしたレポートの遣り取りの不統一を見てもペーパーレス化はなかなか進まないように思います。電子書籍の浸透にも個人的には懐疑的です。

さて、ここで学芸員資格講座を受講すると何故穏やかに作品と向きあえなくなるのか、理由を明らかにしておきます。博物館法上、学芸員の主たる職務は収集、保管、展示、調査研究の4つと規定されています。収集された資料をただ収蔵庫に保管しておくだけでは博物館の使命は果たせません。そのため学芸員資格講座では博物館実習の受講が義務付けられなかでも展示論に多くの時間が割かれます。陶磁器、掛軸、刀剣、仏像、古文書等、さまざまな資料毎に取扱方法や展示の仕方を学んだ上で、実際に陳列ケースの中に入って理想的な展示空間づくりに取り組みます。どう展示したら美しく見えるのかという点だけではなく、温湿度管理や照度調整といった展示環境にも細心の注意を払います。結果、受講後は展示作品の高さ(床から140㌢前後)、作品の配置、キャプションの配置、温湿度計の有無(あればその数値)等に否応なく目が行くようになります。

松屋銀座で15日から開催されている「柳宗悦展-暮らしへの眼差し-」では、展示作品だけではなくブロック毎の展示構成や10分程度のビデオ上映に関心が向かいました。陳列ケースの奥に置かれた除湿剤パックの存在も気になりました。受講後まもないこの時期に見た柳宗悦展は、作品以外の要素を加味しても、掛け値なく上質な展覧会だと思いました。普段より時間をかけて鑑賞する愉しみが増えたことで芸術の秋は忙しくなりそうです。