株式非公開化の流れ

http://www.enoteca.jp/images/main_big.jpgワインの専門商社エノテカ(3049)が一昨日MBOを発表しました。今朝の日経はTSUTAYAチェーンを運営するCCCの増田社長がMBOを実施して東証1部上場廃止を目指すと報じています。昨年秋、出版業界の風雲児と呼ばれる幻冬舎社長の見城徹さんがMBOを発表したところ、俄かに登場した投資ファンド<イザベル>が市場で株式を買い進め、見城氏側が当初提示した公開価格の引き上げを余儀なくされるという波乱含みの展開も記憶に新しいところです。

上場廃止になれば株主は市場で持株売却が出来なくなりますので、ステイクホールダーにとって買収側が呈示するTOB価格(直前株価に対するプレミアム)が最大の関心事項ということになります。MBOが日本で本格化した2005年〜2007年までの平均株価プレミアムは20%前後、一時50%まで上昇したプレミアムは現在20〜30%で推移していると云われています。突然株主を襲うMBOという経営陣側の権利行使に対して、残念ながらステイクホールダーの防衛手段は限られています。個人株主ともなればTOBに応じるか買付期間中に市場売却する以外株式を換金する手段はありません。CCCの場合、過去5年間以内に同社株を買った投資家に利益は出ないそうですから、お気の毒としかいいようがありません。

株式を公開し会社を公器となす選択を行ったオーナー経営者には、原則として、上場を維持するエスィカルオブリゲーションがあると考えます。オーナー経営者の恣意的なMBOを牽制する上でも上述の<イザベル>のような投資ファンドの介入はある程度容認されるべきでしょう。エノテカMBOにおいてはアーンストアンドヤングが第三者算定機関として株価算定に関与していますが、同社はフェアネスオピニオンを取得していません。同社の株主には株価算定の公正性や適正算定価値水準を争う余地があるはずです。市場の自浄作用を促す意味においても、司法の場において買取り価格の妥当性を争う動きが活発化することを期待します。