『ベスト・キッド』は映画の原点



今年一押しの映画になるかも知れません。この数年の制作映画を振り返ると、観ていて心がヒリヒリするような作品(例えば2007年『実録:連合赤軍あさま山荘への道程』や2008年『チェンジリング』)に押し潰されそうになった記憶の方が圧倒的に鮮明です。もう一度観るにはそれなりの覚悟が必要な作品と云った方が伝わるでしょうか。その反作用からか、所謂娯楽大作への欲求が昂じていたところに『ベスト・キッド』が再登場してくれました。オリジナルは御存じミヤギ達人で話題となった原題"The Karate Kid"、リメイク版は舞台を中国に移してカンフーが空手にとって代わっていますがオリジナルを完全に凌いだと云って差し障りないでしょう。師匠役のジャッキー・チェンに対して主演ドレを演じたジェイデン・スミスが次第に心を開いていくあたりの役作りは見事で七夕伝説を採り入れたプロットの出来栄えも秀逸です。制作陣には『メン・イン・ブラック』のウィル・スミスが加わっています。社会派の映画はなくてはならないものですが、映画の原点は一義的に観客を楽しませるものであって欲しいと思います。観客の期待を裏切らないラストシーンに誰もが快哉を叫びたくなるはずです。憎たらしい中国小僧の一挙手一投足に注目です。