借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展は凄い


映画作りの脇役と思われがちな<美術さん>が主役の頗る良質な企画展でした。10/3まで東京都現代美術館で開催されていますので未だの方はお見逃しなく(映画を先にご覧の上で)。エスカレーターで会場3Fまで上がるとアリエッティの玄関口ともいうべき通風孔が来館客を静かに出迎えてくれます。その先は迷路のような廊下を辿って体感してみて下さい。96年に岩井俊二監督が送り出した『スワロウテイル』に登場する架空都市<円都(イェンタウン)>で種田さんの映画美術監督としての才能と手腕を目の当たりにして以来、邦画を見るたびにそれとなくエンディングに流れる美術スタッフの名前に目が行くようになりました。オールマイティの種田さんは筆者の嗜好から外れた多数の映画作品で大活躍されているのですが、ここ数年自分が劇場に足を運んで観た佳作『ザ・マジックアワー』や『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』に限ってもそこに登場するホテルや酒場のセットはいずれも種田さんの作品でした。時代考証に基づき単に建物や周辺環境を再現するだけではなくアーティストの視座から映画作品の主題に即した創造的な表現を加えようとする点が種田さんの真骨頂です。それも決して出しゃばらず予定調和の如くにです。館内で上映されていたインタビュー映像によれば、現在、台湾で意欲的な作品を製作中ということでした。そして、今日封切られたばかりの『悪人』に登場する灯台退息所やホテルの一室も彼の作品です。吉田修一さんの素晴らしい原作が映像化されるだけでも胸が躍るのですが、種田アートが加わるとあっては観に行かない訳にはいきません。