W杯ロシア大会ポーランド戦を振り返って

グループリーグ第3戦の相手はすでにグループリーグ敗退の決まったポーランド。とはいえ、グループHのなかでは世界ランキング13位と最強。第3戦に勝つか引き分けで二大会ぶりの決勝Tに進めるという有利な立ち位置で臨んだサムライジャパンでしたが、後半14分にセットプレイからポーランドに先制されてしまいます。

後半ラスト10分となって、他会場で戦うセネガルがコロンビアに先制されて0-1に。西野監督は、このままセネガルが負ければ、ポーランドに1点差で負けても、フェアプレイポイントで勝る日本がH組2位となり、決勝T進出を決められると判断、選手に自陣でパス回しを命じました。すでに予選敗退が決まっていたポーランドも、深くボールを追わずそのまま1-0で逃げ切り勝ち点3をゲット。もしセネガルがコロンビアに追いついたらこの博打は無残な失敗に終わっていたはずです。

結果は西野監督の思惑どおりになり、日本は明日未明に赤い悪魔ベルギーとベスト8をかけて戦います。ラスト10分間を観ていた自分はやり場のない憤りを感じました。確かにルール違反ではないし、勝ち上がるための戦略と言えばそれまでです。

メディアも日本人サポーターも概ね西野監督の判断を是としているようですが、一夜明け二晩三晩が経っても、自分の憤りは収まりません。ラスト10分のパス回しは、互いに死力を尽くして勝ち負けを争うスポーツの本質に反するからです。6月30日付け朝日新聞天声人語は<思えば観戦者とは勝手なものである。結果を要求し、同時に、その過程において感動させてほしいと願う>とその重圧と戦う西野監督に同情的ですが、観戦者の身勝手と決めつける立論がそもそも的外れです。ラスト10分、結果同点に追いつかなくても、そのプロセスがスポーツマンシップを発揮し、死力を尽したものであれば、観客は予選で敗退しても納得できるはずです。

礼儀正しさやフェアプレイの精神をサムライジャパンの魂だとすれば、今回のラスト10分は前二戦の日本チームに対する評価を著しく損なうものでした。<ずる賢さを身に着けた>と日本チームの成長を言祝ぐのも笑止です。サッカー先進国はこんな露骨なパス回しをせずに、何よりスタジアムを埋めた観客ファーストで巧みな試合運びをするはずです。「見苦しい」の一語に尽きます。

入場料を支払ってスタジアムに陣取る地元ロシアの観客、はるばる日本から高額な旅行代金を支払って遠征してきたサポーター、何より世界が注視するW杯であること、そしてこうしたプレイがもたらすであろうネガティブな反響に対して、西野監督は明らかに思慮を欠きました。世界のメディアに「茶番」だの「醜悪」だのとまで非難されて16強に残る意義は果たしてあったのか?すべては、ベルギー戦で答えが出ます。