美術・建築

吉村芳生(よしむらよしお)展レビュー@東京ステーションギャラリー

[超絶技巧を超えて]というサブタイトルがついた吉村芳生展は、その緻密な描写において、観る者すべてを圧倒する内容でした。このアーティストに馴染みのない人が見れば、写真展だと見紛うこと間違いありません。入口近くには、代表作の「365日の自画像」(198…

「武四郎涅槃図」の世界

世田谷区岡本2丁目にある静嘉堂文庫美術館を久しぶりに訪れました。国宝天目茶碗三点の最高峰稲葉天目を所蔵することでつとに知られる美術館です。なんと言っても立地が素晴らしい。切り立った国分寺崖線の一画、岡本静嘉堂緑地にあって、戦後は手つかずの自…

生誕110年東山魁夷展@国立新美術館

11/30(金)は国立新美術館の夜間開館日。この日は夕方から六本木に移動し、サントリー美術館で「扇の国、日本展」を観て、その足で国立新美術館に向かいました。久しぶりの美術展のハシゴ、両展覧会とも出品数が比較的少なかったので、じっくり鑑賞することが…

東美の美術品鑑定とマーケットメイク

一般財団法人「東美鑑定評価機構」が美術品の真贋判定に加え、基準価格を提示する事業を始めるのだそうです。母体の「東京美術倶楽部(東美)」は株式会社組織で創業は明治40年、港区新橋に立派な社屋があります。会社組織との関係が今ひとつ判然としないので…

特別展「縄文」を堪能する

7/31から縄文時代の国宝6点すべてがトーハクに集結、8月上旬、満を持して特別展「縄文」へ。「歴史秘話ヒストリア」と「日曜美術館」もしっかりと視聴した上で臨んだ特別展の第一印象は、ホンモノの迫力が桁外れだったこと。とりわけ、TVの映像や写真では表…

東京ミッドタウン日比谷のプロムナードが素晴らしい!

かつて鹿鳴館のあった日比谷に東京ミッドタウン日比谷がグランドオープンしてから1ヶ月あまり。GWも過ぎれば混雑が緩和されるかと、昨日、銀座黒田陶苑の個展を覗いた足で竣工したばかりの複合施設を見て回りました。商業施設といえば圧倒的なブランド力を誇…

「北斎とジャポニスム」展は北斎へのオマージュだ!

「北斎とジャポニスム」展の会期もいよいよ今週末まで。すでに来場者は30万人を超えたといいますから大変な盛況ぶりです。展覧会のサブタイトルは「HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」、会場に足を運ぶと、文字どおり、葛飾北斎の浮世絵が西洋の美術、建築、音楽な…

空前絶後の「安藤忠雄展 挑戦」

国立新美術館で開催中の安藤忠雄展はMUST-SEEです。建築家の展覧会としては空前絶後ではないでしょうか。10/10付けの朝日新聞によれば、この展覧会は、ほぼすべてが安藤さん(76歳)と事務所の手作りなのだそうです。道理で展示されている模型や液晶ディスプ…

開館初日に漱石山房記念館を訪ねて

待望の新宿区立漱石山房記念館開館の日を迎えました。今朝は早めに朝食を済ませて鞄にスマホと『漱石の思い出』を突っ込み、JR中央線に飛び乗りました。中野で地下鉄東西線に乗り換え早稲田で下車、漱石山房通りを歩いて、現地には開館1時間前に到着しました…

両界曼荼羅図といえば東寺でしょ!

今月のブラタモリは三週連続で高野山がテーマ。9日は見逃してしまいましたが、昨夜放映された#83の「高野山と空海」はなかなか興味深い内容でした。3年前の秋、サントリー美術館で開催された「高野山の名宝展」で初めて目にした国宝<聾瞽指帰(ろうこしい…

古谷和也さんの信楽大壺

6月中旬に古谷和也さんの個展で買い求めた信楽の大壺がとうとう我が家にやってきました。径49センチ、高さが52センチもありますから、見たこともないような大きな桐箱に格納されて届きました。クッション材で何重にもプロテクトされていましたから、梱包はさ…

国立新美術館開館10周年の企画展は「ジャコメッティ展」!〜群像作品がイチオシです〜

先月末金曜日の夕刻、国立新美術館で開催中の「ジャコメッティ展」(〜9/4まで)を訪れました。毎週金曜日と土曜日は20時まで開館していますから、混雑を避ける意味でも夕方から足を運ぶのが得策です。この日は、来館者が思ったより少なくてじっくり鑑賞するこ…

都美の「バベルの塔」展を振り返って〜ヒエロニムス・ボスも見逃せません〜

週末、東京都美術館で開催中の「バベルの塔」展を訪れました。会期終了まであと1週間(〜7/2迄)、雨天にもかかわらず開館を待つ人々の行列ができていました。今回の展覧会の目玉は、ピーテル・ブリューゲル1世(同名の息子がいるのでブリューゲル父とも称さ…

滝平二郎の世界展@三鷹市美術ギャラリー(〜2017/7/2)

JR三鷹駅南口に直結するCORAL5Fに三鷹市美術ギャラリーがあります。小規模な施設ながら、ユニークで質の高い企画展には定評があります。週末、同ギャラリーで開催中の<色あせない風景 滝平二郎の世界展>に足を運びました。 朝日新聞日曜版一面を長く飾った…

渡辺愛子陶芸展〜信楽の大壺を買う〜

GWも最終日、飛び石でしたがお天気にも恵まれ、専ら近場の散策に勤しみました。お蔭でパソコンから解放されドライアイが幾らか改善したように思えます。ただ、1日だけインドアの日を設けて、東武百貨店池袋店の美術画廊を訪れました。定期的に池袋店から図録…

ロバート・メイプルソープ展@シャネル・ネクサス・ホール

待望のメイプルソープ展がファッションのメッカ銀座シャネルにやってきました。本格的なメイプルソープの展覧会は近年記憶にありません。その多彩な作品群が日本で網羅的に紹介されるのは2002年以来、15年ぶりのことだそうです。 70年代、ニューヨークを拠点…

東京初開催の「エルメスの手しごと」展@表参道ヒルズ〜パリから職人がやってきた〜

フランス系銀行傘下の証券会社に勤務していた折り、年に数回はパリ出張がありました。エアチケットの手配をする秘書からスケジュールを聞きつけた同僚(もちろんキャリアウーマンです)から、しばしばエルメスでの買い物を仰せつかりました。というのも、パ…

「並河靖之七宝展」@東京都庭園美術館

先週末、都内でも屈指の高級住宅街、港区白金台にある東京都庭園美術館で開催中の「並河靖之七宝展」(1/14〜4/9)を鑑賞してきました。博物館や美術館が軒を連ねる賑やかな上野の杜と違って、庭園美術館は建物全体が隣接する自然教育園の豊かな自然と同化し…

ガーゴイルと魔除け

初詣に出掛けると、参拝者のなかに破魔矢や鏑矢を持った人を多く見かけます。どちらも縁起物ですが、あわせ持つ意味は少し異なります。破魔矢には除魔開運のご利益がありますので、我が家はこちらを買い求めます。破魔矢より大振りの鏑矢は、戦闘で最初に放…

じっくりと鑑賞できた「ゴッホとゴーギャン展」

先週末、都美で開催中の「ゴッホとゴーギャン展」を鑑賞してきました。会期が短いのでかなりの混雑を覚悟していましたが、週末にもかかわらず、入場待ちは10分程度で済みました。企画展鑑賞の際は、あらかじめ出品目録で作品数を確認するようにしています。…

出光美術館50周年記念<大仙厓展>に感極まる

会期最終日の13日、出光美術館で開催中の<大仙厓展>を鑑賞してきました。百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』が第10回本屋大賞(2013年)を受賞して、出光興産創業者出光佐三氏の生涯が広く世に知られるようになりましたが、彼には実業家のほかに美術品蒐…

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館は見逃せない!

NY滞在の主目的をスポーツ観戦にしたため、宿泊先に近いMoMAや昨年改装したばかりのホイットニー美術館も諦め、グッゲンハイム美術館だけを訪れることに。早朝、ゆっくりセントラルパークを散策しゼイバーズのデリで腹ごしらえをしてから、目的地に向かいま…

「世界報道写真展2016」から見えてくる世界の姿

2014年9月から2年あまり改修工事のため閉館していた東京都写真美術館が、今月3日にリニューアル・オープンしました。リニューアルに伴い、「トップミュージアム(TOP MUSEUM)」という愛称も決まり、シンボルマークが一新されていました。ミュージアムショッ…

ポール・スミス展-Paul Smith is So Cool-

週末、上野の森美術館で開催中(〜8/23)の「ポール・スミス展HELLO,MY NAME IS PAUL SMITH」を覗いてきました。ロンドンのデザインミュージアムで好評を博したというポール・スミス展(2013年)がヨーロッパ各地を巡回して、とうとう東京にやってきたからで…

林芙美子記念館を訪ねて

3連休の初日の土曜日、大江戸線中井駅を起点に終日アトリエ巡りを楽しんできました。散策には、新宿歴史博物館が配布しているウチワの形をした<落合記念館散策マップ>が便利です。コースは林芙美子記念館をスタートして、落合秋艸堂跡(會津八一旧居跡)、…

川端康成コレクション展@東京ステーションギャラリー

文豪川端康成が蒐集した美術品など多彩なコレクションを一堂に集めた展覧会が、先週まで、東京ステーションギャラリーで催されていました(〜6/19まで)。文学展というと作家の生原稿や蔵書或いは遺愛品等を陳列するのが一般的で、熱心なファン以外の鑑賞者…

ボストン美術館所蔵国芳国貞展を振り返って

ザ・ミュージアムで開催されていた「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」展(3/19〜6/5)が盛況のうちに閉幕となりました。会期末の前日にようやく鑑賞が叶いました。若冲ほどではないにせよ、すでに来場者は10万人を超え、朝一で現地に赴くとす…

国立西洋美術館が都内初の世界文化遺産へ

昨日、上野の杜の国立西洋美術館がル・コルビュジェ(1887〜1965)の建築作品のひとつとして世界文化遺産に登録されることがほぼ確実になりました。前川国男(東京文化会館の設計者)や丹下健三といった20世紀を代表する日本の建築家に多大な影響を及ぼした…

生誕300年記念若冲展は前代未聞の大混雑

GW後半、体調を崩して若冲展を観に行けなかっため、土曜日の昨日トライすることに。開館1時間前に都美に到着したにもかかわらず既に長蛇の列、数千人が並んでいるではありませんか。都美の入口から蛇行しながら延々と列が続き、最後尾は旧東京音楽学校奏楽…

没後100年宮川香山展〜超絶技巧を前に圧倒されます〜

週末、サントリー美術館で開催中の没後100年宮川香山展を訪れました。実際に宮川香山の作品を見るのは初めてです。図録の関連年表を見るかぎり、東京での回顧展の開催は30数年ぶりのようです。フライヤーのキャッチコピー「欧米を感嘆させた明治陶芸の名手」…