泡の季節到来~英国王室御用達シャンパーニュ「ダンジャン・フェイ」は大当たり~

6/20の東京の最高気温は28.6℃。じわじわと気温が上昇しつつあります。キンキンに冷やしたビールやスパークリングワインが美味しい季節の到来です。今夜のメインはアヒージョ、食前酒にはストックしてあったシャンパーニュ「ダンジャン・フェイ("DANJIN FAYS")をもってきました。通販ではなく近所のスーパーで手に入れた記憶があります。

好みのスパークリングワインは芳醇な果実香とほどよい甘さがあること。「ダンジャン・フェイ」のエチケットからはそこはかとなく風格を感じました。こうした直感は概して当たるのです。抜栓して試してみれば期待以上の味わいでした。ぶどう品種はピノノワールピノ・ムニエシャルドネ、熟成期間は30ヵ月ということです。ヴーヴ・クリコやルイ=ロデレールと肩を並べて、英国王室御用達=ロイヤル・ワラントに選ばれるわけです。日本を代表する世界的ソムリエ・田崎真也さんは「ダンジャン・フェイ」をこんな具合いに絶賛しています。

「トパーズがかった明るい黄金色。気泡は生き生きしている。香りは芳醇で、りんごやチェリーのコンポートのような果実香りに、菩提樹ジャスミンの花、石灰のようなミネラル香、ビターアーモンドにブリオッシュ、ほのかにヘーゼルナッツの香りなどが調和。味わいはまろやかな果実味から、広がりは酸味とのバランスがよい。泡の刺激がなめらかさを与え、余韻にエレガントさを残す。おすすめ料理:帆立貝のバター焼きのような料理」

たまたまマリアージュしたメインは、帆立貝にベーコンやズッキーニ、丸ごとニンニク、それからチーズを具材にしたアヒージョ。田崎さんの言葉そのままに抜群の相性でした。ワイン漫画の傑作『神の雫』の続編、『マリアージュ神の雫最終章~』(2016年7月掲載)に取り上げられたそうですから、納得の最高峰のシャンパーニュと言って間違いありません。参考価格は750ml、3000円台後半です。

玉川上水のアナベル~三鷹橋からむらさき橋へ~

玉川上水に架かる三鷹橋とむらさき橋間をよく行き来します。最寄り駅への最短経路だからです。玉川上水の南側には「風の散歩道」と呼ばれる遊歩道が整備されています。JR三鷹駅からジブリ美術館へ通じる道でもあるため、コロナ前は外国人観光客の往来が盛んな通りでした。三鷹駅の北口にあるスポーツジムへ通うときは、玉川上水の北側(武蔵野市)を歩くことにしています。近年、北側にも立派な遊歩道が整備され、一人掛けの休憩用ベンチも設置されたため、ペット同伴で散歩する人やジョギングする若者をよく見かけます。

梅雨入りしたこの時期、アジサイの花がひと際鮮やかで目を楽しませてくれます。地図上、星印で示したあたりにボリュームたっぷりの真っ白なアジサイアナベル」が見られます。咲き始めは淡い緑がかったライムグリーンですが、最盛期は写真のように純白へと花色が変化します。「アナベル」は北アメリカ原産の西洋アジサイの一種です。ワイルドハイドランジアという品種を改良した園芸種ですから、玉川上水縁りにもともと自生していたわけではありません。誰が植えたのか分かりませんが、毎年この時期に見事な花を咲かせるので、近くで立ち止まって鑑賞する通りすがりの人をよく見かけます。花言葉は「ひたむきな愛」。野生種・園芸種とり混ぜて品種は3000種以上あるとされるアジサイのなかで、可憐な毬姿が特徴の「アナベル」が一番のお気に入りです。生命力が強く剪定も簡単だと言われる「アナベル」ですが、然るべき時期に玉川上水の管理者である東京都水道局が業者に剪定を依頼しているのでしょうか・・・?ほったらかしでもこうして毎年開花するものなのでしょうか、玉川上水の不思議のひとつです。

アジサイの色は土壌のpHで決まります。酸性が強ければ青に、アルカリ性が強ければ赤にという具合です。日本の土壌は弱酸性ですので、青や青紫のアジサイが多いように思います。その点、「アナベル」は花色こそ徐々に変化しますが、植栽場所にかかわらず、基本色がホワイトである点も愛される所以かも知れません。

アナベル」が咲いている付近で「ガクアジサイ」も見かけます。中心に密集している蕾のような部分がはなびらで、その外側にはなびらを守るために葉っぱが変化したガク(装飾花)があります。ガクの方がはなびらのように見えますが、あくまで中心部分がはなびらです。ホンアジサイとは違った野趣が感じられて、白いガクを持つ「ガクアジサイ」も好みです。「ガクアジサイ」にも優に数十種類の品種があるため、写真の「ガクアジサイ」がどんな品種なのか、まだ特定できていません。

実体験に基づく住宅用地購入の盲点

前回、NHK・ドラマ10『正直不動産』を取り上げました。不動産取引全般には様々なリスクが付きものです。今回は、実体験に基づく土地売買の盲点(落とし穴)について解説します。

12年前、戸建て住宅を建設するために約60坪の土地(更地)を購入しました。同じ町内からの住み替えだったので、周辺環境については熟知しているつもりでした。更地として一帯の土地が売却される以前は、王子製紙と関係が深い日本紙パルプ商事の社宅3棟が並んで建っていました。辺りは第一種低層住居専用地域(建ぺい率・容積率は40/80)で高さ制限は10m。吉祥寺や三鷹周辺は丸の内や大手町など都心への交通アクセスが良好ですから、駅から徒歩10分圏内に大企業の社宅が数多く存在しました。ところがバブル崩壊後の90年代半ばあたりから、資産圧縮の一環で金融機関がこぞって社宅や単身寮廃止の方向を打ち出し、大手メーカーをはじめ一般企業においても好立地の社宅や寮を廃止する動きが加速しました。背に腹は代えられないと、リストラのために福利厚生のための中核資産の売却に着手したわけです。それ以前は協和銀行(現・りそな銀行)の社宅跡地に建てた家に住んでいたので、我が家は社宅と縁が深いのです。

【物件情報の入手方法】親しくしていた三井のリハウスから物件情報を入手した時点で、全9区画のうち5区画にすでに買い手がついていました。週末になると新聞の折り込みチラシに不動産広告が目立つようになりますが、これを頼りに土地やマンションを探すのは素人さんです。広告に出ている土地は、「売れ残り」だと思っておいた方が賢明です。今回のような好立地の大規模住宅地開発の場合、不動産業者には早い段階で情報が入ります。従って、好条件の住宅用地を購入したければ、付き合いのある不動産仲介業者に希望条件(土地の広さ、駅からの距離、希望価格、購入希望時期等)をあらかじめ細かく伝えておき、新着物件情報を可能なかぎり早く入手することです。最近、近所でダイワハウスの3LDK戸建て住宅が2区画開発されましたが、東側1区画は当初より売却対象ではありませんでした。購入済みだったのでしょう。

【売主の素性】次に問題になるのは売主の素性です。先の9区画の売主は、日本紙パルプ商事ではなく中堅の建設会社(以下:D社)でした。日本紙パルプ商事は、敷地と築古の社宅を共々買い上げてくれる業者を優先したのでしょう。社宅撤去費用はD社が負担することになるので、売買代金はその分低く抑えられます。なぜ知名度の低いD社が選ばれたのか、今もって謎です。よく目にするのは、まとまった土地を名のある住宅建設会社が手に入れ、建築条件付きで売却したり、戸建て住宅を建設して分譲するケースです。但し、建築条件付きの場合、施主の希望通りに居宅を建設することはかなり難しくなります。D社は自社で住宅建設を請け負うことなく、社宅撤去後整地して、複数の不動産仲介会社を介して、買主を探す暴挙に出ました。明らかなバラ売りです。最初にD社が適正に分筆しなかったために、折角の広い土地は早い者順で分筆がなされ、全体として見た場合、秩序のない区割りになってしまいました。D社に9区間全体の景観を考慮するような視点がなかったことが悔やまれます。

【土の費用】最寄駅から徒歩8~10分の9区画すべてにほどなく買い手がつきました。買主が選んだハウスメーカーは、案の定、三井ホーム三菱地所ホームが多数派でした。我が家は輸入住宅を専門に手掛ける業者を選びました。建設着工を前にして、気になった点が幾つかあります。老朽化したコンクリート造の社宅が取り壊され基礎を取り除いた結果、表土が失われ、道路より土地が低くなってしまいました。雨水が道路から流れ込む可能性があるので、こちらから盛土をお願いしました。仲介業者が無償でトラックを使って盛土をしてくれましたが、「土留め施工費」を別途請求される可能性があります。逆に道路より土地が高ければ、「残土処分費」がかかります。購入する土地の様子をよく観察し、こうした追加費用が発生する場合、誰が負担するのかあらかじめ決めておかないと紛争の元になります。

【地盤改良費】埋立地など軟弱地盤だと地盤改良費がかかります。地盤調査の結果、小規模住宅に適合的なタイガーパイル工法による地盤改良を施し、地震時への抵抗力を強化することにしました。建物のサイズ次第ですが、土地を購入する場合、数百万単位で追加コストが発生する可能性があります。

【土地の隠れた瑕疵】地盤改良費も目に見えないコストですから、購入土地の特性をあらかじめ知っておくことが重要です。もうひとつ、建設中に地下の埋没物が見つかる場合があります。『正直不動産』の文化財出土は稀な事案としても、コンクリートガラ(コンクリートの瓦礫のこと)、杭、井戸、浄化槽などを、解体業者が適切に処理しないで放置する可能性があります。我が家の場合、竣工後、植栽のため土を掘り返していたら、コンクリートガラが大型のビニル袋数個分、見つかりました。仲介業者に苦情を言って、彼らの責任で引き取ってもらいました。埋没物の撤去費用は誰の負担なのか、<隠れた瑕疵>と言えるのかどうか、法律上の争いに発展する可能性があるので、売買契約上、買主が不当に損することのないよう、責任の所在を明らかにしておきましょう。

【敷地延長土地の間口の広さ】旗竿地(敷地延長土地)の場合、間口が狭いと大変困ったことになります。建築基準法では道路に最低2m接していないと建物を建てることはできません(建築基準法第43条)。旗竿地の大きなメリットは通路部分を駐車場に有効利用できることですが、2.5mは狭すぎて小型車しか駐車できません。我が家は3.12m(12センチ買い増した結果)ですのでゆとりがありそうですが、決して十分な間口とは言えません。隣地境界には塀を作るので、その分、間口は狭くなります。加えて最近はクルマの大型化が進み、愛車のコンパクトSUVでさえ幅員は1850mmあります。自転車の通行、宅配・郵便・新聞等の配達員の常時通行を考えると、今のクルマのサイズがギリギリ一杯なのです。中型SUVを買いたくても、全幅は1900mm前後になりますから、土台無理なわけです。さらに、建物建設(取壊し)には重機が不可欠ですから、搬入できるスペースの確保はマストです。一方、敷地延長土地の間口を2.5mのギリギリに設定すれば、土地の値段が高い整形地はその分広くなり、売主の実入りが増えることになります。旗竿地を購入する場合は、デメリットをよく理解した上で、最低でも3mの間口を確保すべきです。写真(右上)のような、通路部分をいびつに切り取った旗竿地も考えものです。

実体験に基づく土地売買の盲点(落とし穴)、参考になったでしょうか。走りながらひとつひとつ懸案を解決していった記憶があります。人生で一番高価な買い物には思わぬリスクが付きものです。くれぐれも業者に騙されないように、刮目して臨むことです。

大好評だったNHK・ドラマ10『正直不動産』はまだまだ手ぬるい!

NHK・ドラマ10『正直不動産』がNHKプラスで記録的再生回数を叩き出しているそうです。朝ドラや大河を除けば歴代最高値だそうです。全10回放送終了後の6月14日、『正直不動産 感謝祭』と銘打って、キャストや制作スタッフを招いて異例の制作秘話まで披露するという手回しの良さ。NHKらしからぬ視聴者サービスに吃驚しています。『感謝祭』でインテリ俳優・山Pが業界特有の専門用語を覚えるのに苦労したと述べています。山Pに限らずキャスト全員が、誰しも一生に幾度か関わる不動産取引関連用語に疎いという現実に唖然としています。「埋蔵文化財包蔵地」はともかく、「インスペクション(住宅性能診断)」や「ペアローン」の連帯保証といった基本事項は最低限押さえておきたいものです。

ドラマは、街の不動産屋「登坂不動産」に勤務する主人公・永瀬財地(山下智久)と新人社員・月下咲良(福原遥)を中心に展開します。営業成績トップだった永瀬がふとしたきっかけで嘘をつけなくなり、(一陣の風が吹くと)顧客の前で本音を語り始めます。不動産業界は聞きしに勝る「千三つ」の世界。顧客を前に本音トークすれば、成約できようはずもありません。それまで嘘八百を並べ成約を重ねてきた永瀬の営業成績は急降下し、もがき苦しみながら、番組タイトル「正直不動産」屋へと成長する物語です。賃貸にせよ売買にせよ、永瀬の本音トークに翻弄されながら、不動産をめぐって悲喜こもごもの人間ドラマが生まれます。

不動産という身近でいて奥深く難しいテーマを扱いながら、エンタメ性を融合させた制作スタッフの手腕は高く評価されて然るべきだと思います。一方、啓蒙番組として見た場合、まだまだ手ぬるいと感じます。戸建てにせよマンションにせよ、人生における最も高額な買い物は自宅購入です。賃貸であっても、敷金、礼金、仲介手数料、引越し費用等を考えれば、最低でもお給料の2ヵ月分くらいが瞬時に吹き飛びます。にもかかわらず、大多数の人が不動産取引に伴うリスクや手数料体系などに不知で、仲介業者の言われるままにマンションや戸建て住宅の売買契約や賃貸契約を締結してしまいます。さらに難しいのは、介護や相続を理由にやむなく所有不動産を売却する場合です。

心温まる人間ドラマとしての側面は捨象して、不動産業界に潜む悪しき慣行の話をしたいと思います。不動産業界に巣食う最大の問題点は番組でも少し紹介された「両手取引」です。業界大手・東急リバブル三井のリハウスを通じて不動産を購入する場合、両社とも売主・買主双方から仲介手数料を徴収します。3%(+6万円)はあくまで上限です。交渉の余地があることは知っておきましょう。仲介業者は法令で禁止されている物件を事実上「囲い込み」、自社主導で取引が完結するよう動きます。1億円の中古マンション売買と仮定した場合、成約すれば300万円X2+6万円X2=612万円の仲介手数料が転がり込んでくる計算です。となれば、なるべく早く商談を成立させて(お客の気が変わらないうちに)、代金を工面できそうな買主の意向を汲んで、高く売りたい売主を説得に掛かります。万一、商談成立が長引けば機会損失にも繋がるので、買主目線が9500万円で譲らないようであれば、売主には「この辺りが実勢相場で1億円の成約は難しい」ことをことさらに強調します。逆に、売主が頑なに1億円を譲らないのであれば、「近隣で二度とこんないい物件は出てこないので1億円でお願いします」と買主を説得します。いずれにせよ、買主と売主は、<安く買いたい VS 高く売りたい>と利害が対立する当事者ですから、「両手仲介」は利益相反の温床なのです。

マンション賃貸のケースにおいては、専ら管理契約を締結している大家の意向優先で、賃借人の意向に耳を傾ける仲介業者は皆無と言っていいでしょう。最近は現状回復をめぐるトラブルを回避するため、賃貸借契約に「ハウスクリーニング費用負担特約」や「鍵交換費用負担特約」を盛り込み、賃貸人は巧みに費用請求してきます。記載された金額が妥当かどうか、納得できる金額なのか事前にキチンと検討すべきです。契約当事者は本来平等の立場で契約締結を期して交渉すべきですが、実際、賃借人の立場は列強から不平等条約を迫られた明治新政府と変わらなかったりします。

不動産を購入する場合、住宅ローンを利用する人も多いと思います。法定の登録免許税はともかく銀行や業者が指定する司法書士が要求してくる手数料にも目を光らせておくべきです。法に抵触しない範囲で司法書士と銀行や業者の間で少なからずバックマージンの遣り取りが行われています。スーパーで買う肉や野菜の価格は知っていても、司法書士の手数料体系を知らない人が大半ですから。

不動産は人生最大の買い物ですから、数千万円~1億2億の売買代金の遣り取りをするうちに次第に金銭感覚が麻痺してきます。そこで、一桁少ない手数料の支払いに頓着しなくなるのが一番危険です。NHK・ドラマ10『正直不動産』はいいドラマでしたが、NHKが不動産業界に忖度しているのか、業界暗部への切込みはなお不十分です。原作漫画はもう少しシニカルな内容だと聞いています。次回作が期待されているようですから、視聴者がヒリヒリするような辛口ドラマで業界関係者の心胆を寒からしめて欲しいものです。

えっ!知らなかった・・・「イノダコーヒ」だったのね!

キーコーヒーから株主優待品のコーヒーが送られてきました。去年に比べて、袋入りのスペシャブレンドをはじめパッケージの容量が減ったように感じるのは気のせいでしょうか。世界60か国以上でコーヒー豆が生産されていますが、日本は100%輸入に依存しています。日本は米国、ブラジルに次いで世界で3番目のコーヒー消費国。かくいう自分もコーヒーが大好きで、食後のコーヒーを欠かしたことはありません。原材料費の高騰でこれからコーヒー価格は10~20%上昇すると言われています。現にセブン-イレブンのレギュラーサイズコーヒー(値段の割に美味しいです)は100円(税込)から110円(税込)に、マクドナルドのプレミアムローストコーヒーは100円から120円に値上げされます。

こうなると株主優待のコーヒーとて徒や疎かにはできません。先のキーコーヒーの優待品に京都イノダコーヒ オリジナルブレンド (DRIP ON レギュラーコーヒー 5杯分 [8g×5袋])が含まれていました。京都発祥の老舗喫茶店イノダコーヒといえば、堺町三条の本店を何度か訪れたことがあります。経営不振でキーコーヒーの傘下に入ったのかなと思いきや、昨年6月業務提携をしたようです。早速、アフターランチにその「オリジナルブレンド」を頂きました。商品説明のとおり、ほどよい苦みと重厚感のある奥深い味わいに仕上がっています。

ドリップしている間、何気なくパッケージを見ていて、イノダコーヒー」ではなくイノダコーヒだと初めて気づきました。印刷ミス・・・!? WEBサイトを念のため確認すると、イノダコーヒで間違いありません。同社の広報担当者曰く、もともと”珈琲”と漢字表記していたので、それが”こうひ”と平仮名になり、やがて”コーヒ”になったということです(Wikiにもイノダコーヒは誤りであると明記されていました)。これは虚を突かれました。長年、京都に通いながら痛恨の極みです。この店名トラップ、かなりの人が間違って記憶しているのではないでしょうか。来月、同志社大学出身の友人と食事するので、さりげなく尋ねてみようと思います。

創業30周年を迎えたフランク・ミューラー|珠玉のタイムピース「トノウ カーベックス グランギシェ」

最近、腕時計をしている若い人をすっかり見かけなくなりました。スマホなどデジタル端末で正確な時間が確認できる現代、若者の腕時計離れが急速に進んでいると見て間違いなさそうです。30代の息子の場合、ビジネスシーンでは腕時計を着用し、プライベートではつけたりつけなかったりという感じです。息子とは真逆に、ファッションアイテムとしての腕時計はむしろ休日に身に着けるものという考え方が昨今のトレンドだそうです。4年前の民間調査によれば、外出の際、腕時計をつける人は全体の43.7%にとどまっています。

機械式時計が好きで、腕時計に大枚をはたいてきた自分には到底理解できない時代の趨勢です。外出する際、自分にかぎって腕時計をしないという選択肢はありません。今や、ビジネスシーンで腕時計をしていなくても、上司に咎められたりすることもないのでしょう。腕時計やネクタイがサラリーマンにとって鎧兜の類いであった時代はとうの昔に終焉を迎えていたのです。

洗練されたデザインと美しいフォルムが特徴のフランク・ミューラーの「トノウ カーベックス グランギシェ」(それぞれ、フランス語で「樽」「湾曲」「大きな窓」を意味します)は、愛用する機械式時計のなかでも、とびきりの逸品です。時の記念日に発行された<THE NIKKEI MAGAZINE STYLE>を読んで、今年、フランク・ミューラーが創業30周年を迎えたことを知りました。時計好きなら知らない人はまずいないトップブランド、フランク・ミューラーがようやく創業30年とは驚きです。最高峰のブランドイメージと短い社歴がどうにもミスマッチだからです。名門ジュネーブ時計学校を最短・首席で卒業したフランク・ミューラーは、ブレゲの再来と言われ天才時計師の名を恣に、1992年に自身の名を冠したブランドを立ち上げます。以来、トゥールビヨンに代表される複雑系機構の時計をはじめ、数々の名品を世に送り出してきました。数あるモデルのなかで、三次元曲線フォルムを構成するトノーカーベックスは創業時に発表された時計ケースの傑作です。美しい立体的な曲線に加え、腕回りにしなやかにフィットする湾曲したケースは、機械式時計愛用者ならどうしたって手に入れたくなる一品です。前述の日経マガジンによると、俳優・唐沢寿明が愛用するのは「カサブランカ」。<限られた時間をどう過ごすか。何に囲まれて生きるか。それを選ぶセンスが人生の価値を決めると思う>とコメントを寄せています。作家・池井戸潤は「トノーカーベックス シークレット アワーズ」を愛用しているそうです。ふたりともほぼ同世代、同好の士に出会ったような気がしてなりません。

珠玉のマイタイムピース「トノウ カーベックス グランギシェ」の文字盤には繊細極まるギョーシェ彫りが施され、インデックスには独特のビザン数字、針には夜光塗料が塗られています。視認性抜群で優美なビザン数字は、フランク・ミューラーらしい飽くなきデザイン追求の賜物です。グランギシェ=大きな窓で表示される二桁の日付は、2枚の回転ディスクを並列に重ね合わせているため、数字は独立して動きます。

名門パテック フィリップの普遍のキャッチコピーは「親から子へ、子から孫へ」。果たして、愛用するパテックやフランク・ミューラーのタイムピースは世代を超えて受け継がれていくものでしょうか。時計はただ時を知るためだけのモノに非ず。メンテしながら親の時計を愛用してくれたらと願うのは時代錯誤だと分かっていても、黙ってはいられないのです。

「観天望気」の心得 ~『すごすぎる天気の図鑑』はぜひとも読んでおきたい良書 ~

琵琶湖疎水のトンネル出入口に設置されている扁額には、明治の元勲ら先人の揮毫で疎水完成を讃える含蓄深い言葉が刻まれています。そのひとつ、第1トンネルに掲げられた扁額に揮毫したのは初代内閣総理大臣伊藤博文です。千変万化する風光は素晴らしいという意味の「気象萬千(きしょうばんせん)」と記されています。

最近、『もっとすごすぎる天気の図鑑』が刊行されました。去年話題になった『すごすぎる天気の図鑑』の続篇にあたります。著者・荒木健太郎さんは気象庁気象研究所に勤務する現役の研究官です。災害をもたらす雲のしくみを研究されているそうです。前篇あとがきで「気象萬千」に通じる「観天望気」、一歩進めて「感天望気」について言及されています。「夕焼けの次の日は晴れ」、「ツバメが低く飛ぶと雨が降る」という言い伝えがあるように、古来より、人々は自然現象や生き物の行動の様子などから天気の変化を予測してきました。こうした経験則を迷信・俗説の類いだと切り捨てるのは間違っています。寧ろ、私たちは空の様子や雲の動きを仔細に観察することで、天気の変化を相当な確度で予測してきたと考えるべきです。

『天気の図鑑』という名称から、子供向けの本だと早合点してはいけません。中身は頗る専門的で、大人が読んでも目から鱗の内容満載です。週末や夏休みを直前に控え、お天気を心配しない人は皆無でしょう。ところが、本書を読むと、天気予報が伝える内容を大多数の人が誤解していることに気づかされます。例えば、降水確率100%と聞くと大雨を想像しがちですが、「降水量1mm以上の雨か雪が降る確率」を示しているに過ぎません。大気の状態が不安定なら降水確率30%でも土砂降りの雨になる可能性があり、逆に降水確率100%であっても小雨で済む可能性があるということです。天気予報が外れたと感じるのは、往々にして、私たちが正しく天気予報を理解していないせいなのです。

もうひとつ本書から引用しておきましょう。台風が発生すると、「予報円」と呼ばれる台風の中心を示す円が次第に大きくなる天気図をよく目にします。「台風の予報円の大きさは、台風の大きさではない」と荒木さんは解説します。「予報円」は台風の中心がある確率が70%の円を示したもので、「予報円」が大きい場合は台風の進路予報は変わりやすく、逆に「予報円」が小さいほど、高い確率でその進路を進むと判断すべきなのです。

天気予報があれば「観天望気」は不要だと考えるのは早計です。現代の技術を以てしても、「積乱雲(雷雲)」の正確な予測は難しいのだそうです。従って、雲を見て天気の急変を予想するのは実は理に叶ったアプローチなのです。成長中の「雄大積雲」の頭に雲(頭巾雲)が見えれば、「積乱雲」に発達する可能性があります。青空に「かなとこ雲」が見えたら、その先で「積乱雲」が発生している可能性が高いと荒木さんは言います。新海誠監督の『天気の子』に様々な雲が登場しましたが、なかでも、上面が平らで金床に見える「かなとこ雲」(写真下)はとても印象的な雲形でした。十種雲形こそ理解していましたが、種、変種、副変種を加えると、雲の種類が100種類以上になることを本書を読んで初めて知りました。

本書は、地球温暖化がもたらす豪雨や猛暑について、データに基づいて警鐘を鳴らしています。東京に接近する台風の数はこの20年で1.5倍になったそうです。こうした自然災害への備えはこれからますます重要視されることでしょう。

GWに立山黒部アルペンルートを訪れたとき、断崖に聳え立つ大観峰で「彩雲」を目撃しました。「あっ、虹だ」とそこかしこから歓声が上がりましたが、正しくは虹ではなく「彩雲」でした。吉兆の表れで「瑞雲」とも呼ばれ、雲のなかでも特に美しいものです。東京に暮らしていると、めったに空を見上げることがありません。下の写真は、数日前に近所で撮影した「雄大積雲」です。さらに発達すれば雷を伴う「積乱雲」になります。「観天望気」を心掛ければ、自然災害から身を守れるだけでなく、日常生活が目に見えて豊かになるはずです。そして、都会を離れたとき、山野で見る景色にひときわ愛着が増すように思うのです。