2022年|寿初春大歌舞伎第二部で気分華やぐ~演目は『三番叟』に『邯鄲枕物語 艪清の夢』~

新年1月8日が歌舞伎座通い初めになりました。昨年同様、寿初春大歌舞伎は三部制、お正月にふさわしい歌舞伎舞踊『春の寿』に初笑いを誘う『邯鄲枕物語 艪清の夢』を組み合わせた第二部を鑑賞しました。一昨日の初雪は殆ど解けて麗らかな日和でした。いつものようにJR有楽町駅から晴海通り沿いに歌舞伎座をめざし、銀座四丁目交差点の和光前までやって来ると人だかりが出来ています。通行人のお目当てはショーウインドウに鎮座ましますホワイトタイガー。一定の間隔で瞬きをするホワイトタイガーは本物さながらの迫力です。3日前に那須サファリパークで複数の飼育員がベンガルトラに襲われた事件が頭を過りました。対面、銀座・三越前のライオンは依然マスク姿。一向に収束しないパンデミックと新年を寿ぐ空気が同居する光景にはいまだに馴染めません。この奇妙な違和感の正体こそ、パンデミックを象徴する心の在りようなのでしょう。

歌舞伎座正面左手には八海山の樽が山積みされ、門松を前に記念撮影する観客の姿がチラホラ。自分でチケットをもぎって入場すると、1階ロビー正面には大きな鏡餅が供えられ、見上げれば吹き抜けに向かう一面に華やかなお正月飾り。初芝居を観る前から顔はほころびテンションが上がります。1月の歌舞伎座の雰囲気は格別なのです。

お正月の演目と言えば『寿曽我対面』、江戸寛永年間あたりからお正月上演が恒例となり「初曽我」が慣習化していったようです。自分の好みは『三番叟』です。今年は歌舞伎舞踊『三番叟』に『萬歳(まんざい)』の二題。前者は古来より災いを鎮め天下泰平・五穀豊穣を祈念する儀式舞踊、後者は新年を言祝ぐ縁起のいい舞踊とされています。能狂言から派生した歌舞伎『三番叟』を演じる三人、翁(梅玉)、千歳(魁春)そして三番叟(芝翫)はセリ上がりで登場します。『三番叟』は『勧進帳』に代表される「松羽目物」に分類され、能舞台のように正面鏡板に大きく松が描かれます。横一列に並んだ長唄囃子連中が奏でる三味線や小鼓で華やぎを演出しながら、儀式性に重きをおく『三番叟』の様式美がお正月にはうってつけなのです。お正月こそ『三番叟』が観たいと常々思っていて今年はそれが叶いました。

後半は『邯鄲枕物語 艪清の夢』。この日49歳の誕生日を迎えた幸四郎演じる艪屋清吉は共演者からいじられまくり。追い剥がれ役の錦之助さんは廻し姿で肉体美を誇示しながらハッピーバースデーを歌い髭ダンスまで披露、女房役のおちょう(孝太郎)はバースデーケーキを用意する始末。こうなると松竹新喜劇さながらで大いに笑わせてもらいました。2022年歌舞伎座は上々の滑り出しだったのではないでしょうか。

ブックレビュー:『老人支配国家 日本の危機』(文春新書)

『老人支配国家 日本の危機』の著者はエマニュエル・トッド氏。ソ連崩壊やリーマンショック、イギリスのEU離脱を予測したことで知られる歴史人口学者です。2020年12月に完全日本語オリジナルとして出版された『エマニュエル・トッドの思考地図』を読むと、著者のアカデミック・バックグラウンドがよく分かります。フランスのアカデミーにおいては異端児だと自認されています。マクロン大統領や仏エリート官僚養成校ENA(フランス国立行政学院)出身者を含めたエスタブリッシュメントに対して総じて批判的なだけに、異端児扱いされるのは無理からぬことなのでしょう。トッド氏が思考の軸にしているのは、統計データであり歴史です。

「経済統計」は嘘をつくが「人口統計」即ち「人の死」は嘘をつかないというトッド氏の指摘には意表を突かれます。高齢者のコロナ死亡率を驚くほど低く抑え込んだ日本の医療体制に敬意を表しながら、社会の存続に重要なのは高齢者の死亡率より出生率だとトッド氏は指摘します。コロナ禍における日本の取り組みは、「老人」の健康を守るために結果的に「現役世代」の活動を犠牲にしたわけで「シルバー民主主義」とは実に的を得た形容です。親日家でもあるトッド氏は日本の行く末に相当な危機感を抱いているようです。

従来から取り沙汰されてきたように、「シルバー民主主義」の背後にある見逃せない問題は<世代間格差>なのです。グローバリズムの恩恵を受けてきたのはベビーブーマー世代や団塊世代の高齢者であり、逆に最も犠牲を強いられてきたのは先進諸国の若い世代だという厳然たる事実から目をそらしてはなりません。若者にとって生き辛い世相が半ば定着していますから、次世代を産み育てる力が年を追うごとに低下し続けるのは無理もありません。厚生労働省が発表する「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によれば、2020年の出生数は840,832人・合計特殊出生率は1.34で、日本は世界のなかでも特に出生率の低い国なのです(下のグラフの出典は厚労省HP)。都道府県別では東京がダントツの最下位で合計特殊出生率は1.13です。内閣府のHPには主要国の児童手当や子育て支援策の比較表が掲載されていますが、児童手当に所得制限が課されているのは日本だけでした。主要国対比、総合的に日本の子育て支援策が見劣りすることは明らかです。政府の梃入れはマスト、新婚さんへの手厚い給付で国力回復を図るべきでしょう。

本書の最終章(IV)には<「家族」という日本の病>と題した対談が編まれています。トッド氏の対談相手は歴者学者の磯田道史さんと本郷和人さんです。日本の最大の問題が少子化に伴う人口減少である点に異論はありませんが、直系家族的価値観が育児と仕事の両立を妨げ少子化を招いているとする分析は短絡的で到底与することは出来ません。寧ろ、核家族化が急速に進んで家系の継続性に重きをおく直系家族的価値観が喪われつつあることが人口減少を招く大きな要因ではないかとさえ思うのです。戦前の家督相続は法の下の平等の見地から論外だとしても、大多数の日本人が皇統保守に理解を示すように、家系を守るというテーゼを家族三代で承継していくための営みをより多く取り戻していくべきだと感じています。お彼岸やお盆のお墓参りや年末年始の帰省を欠かさなければ、やがて先祖から脈々と繋がる自分たちの存在基盤に気づき、両親がそうしてきたように子供を育む歓びや労苦に目覚めるのではないのでしょうか。結婚や出産は権利であって義務や務めではないという考え方にどうしても違和感を覚えてしまうのです。

ブックレビュー:『フランスの小さくて温かな暮らし365日』

年明け、オミクロン株の感染者が急増。この2年間お預け状態の海外渡航を今年こそ再開と意気込んでいたのですが、年初から雲行きが怪しくなってきました。航空会社や旅行代理店には厳しい事業環境が続きそうです。もうしばらく、TBS『世界遺産』をはじめ海外の観光地にスポットを当てたテレビ番組で辛抱するしかありません。

ステイホームカントリーのストレスを緩和してくれるのはテレビ番組に限りません。去年3月、近所の書店で衝動買いした『フランスの小さくて温かな暮らし365日』(自由国民社刊)は、1頁ごとにテーマに即した写真一枚を添えてフランスの365分の1日を次から次へと紹介してくれます。日めくりカレンダーのようでもあり歳時記のようでもあり、パンデミックの渦中で読むとじんわりと日々の営みの大切さが伝わってきます。作者は、パリとフランスの情報サイト<トリコロル・パリ>を運営する荻野雅代さんと桜井道子さんです。おふたりは学生時代にフランス語と出会い、映画や音楽、小説とフレンチカルチャーに親しんでいったそうです。フランス語に限らず、住みたい国や訪れたい国の言葉を少しでも話そうと努めるとお互いの距離感が一気に縮まります。

今日1月6日(6|janvier)はフランスではどんな1日なのでしょうか。283/365の小見出しには「誰が王冠をかぶる?真剣勝負のガレット」とあります。新年、神戸屋をはじめベーカリーの店頭でも見かけるようになって久しいのでご存じの方も多いのではないでしょうか。アーモンドクリームの入った焼き菓子のことで、中に”fève(フェーブ)”と呼ばれる陶製のマスコットがひとつ隠れています。人数分で切り分け、フェーブが当たった人にはその1年幸運が訪れるとされます。当たった人は「ガレット」についてくる紙製の王冠を頭にのせてお祝いします。東方三賢人が幼子イエスを訪問・礼拝した1月6日(=「公現祭」)に「ガレット・デ・ロワ(王様のパイ)」を食べるのが正式な習わしなのだそうです。

年の始め1月の別の日にはこんなことが書かれています。フランスにはお正月に華やぎを添えるお正月飾りやおせち料理のような特別料理もなく、パリ在住の作者さんおふたりはいまだにそのあっけなさに馴れないのだそうです。一方、中国料理が浸透しているせいでしょうか?十二支に通じているフランス人が多いのは意外でした。但し、羊は山羊にイノシシは豚に置き換えられているようです。

行きたくても行けない異国の地。せめてもの心の旅にいざ出でん。

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背廣をきて
きままなる旅にいでてみん。(後半略)
  (萩原朔太郎『純情小曲集』より)

2021年歌舞伎界回顧|+南座の吉例顔見世『身替座禅』(仁左衛門 X 芝翫)

コロナ禍の影響で前年に引き続き、2021年の歌舞伎座は大幅に客席数を間引いて3部制(月によっては四部制)を継続しました。昼夜二部制の時代がそろそろ恋しくなりました。幕間に客席で頂くお弁当や名物「めでたい焼き」を楽しみにしている観客にとって、此の2年間はひとえに忍耐でした。オリンピックイヤーに行われるはずだった第十三代市川團十郎襲名披露公演時期も未定のままですから、歌舞伎ファンのストレスは尋常ではないはずです。

2021年歌舞伎座の注目演目は間違いなく四代鶴屋南北作『桜姫東文章』(4月・6月)でした。36年ぶりに復活した孝玉コンビ改め仁玉コンビの妖艶にして頽廃的な舞台は大喝采を浴びたようです・・・というのも家内にチケットを奪われ自分は観ていないからです。9月、『東海道四谷怪談』で仁玉コンビの円熟の境地を見せつけられました。おふたりが古希を迎えていることを一瞬たりとも感じさせない誠に凄みのある舞台でした。

晦日を4日後に控えた12月27日、<中村芝翫に3度目の不倫報道…30年献身の妻・三田寛子に広がる同情>というヘッドラインを見て、目が点になってしまいました。芝翫さんが奥方玉の井役で出演した7月大歌舞伎第二部『身替座禅』(岡村柿紅作)が即座に脳裡をよぎりました。ひとまず、『身替座禅』のあらすじをご紹介します。山蔭右京(白鷗)は恐妻家にして浮気者のお殿様。都にやって来た愛人花子との逢瀬を願う一心から外出しようと奥方玉の井芝翫)を説得しようとするのですが、どうにも上手く運びません。ここで常磐津語り<暫し思案に沈みしか、良いことを思いついた>

右京:「あっ、良い事を思いついた」「夫(それ)なれば持仏堂に閉篭り七日七夜の座禅ないたそう」

玉の井:「夫は一段とようござります」「夫なれば妾がお傍につないていて湯も茶も取て進ぜましょう」

右京:「いやいや女は魔性」「女と目と目を合わすれば座禅得度成りがたしと申せば必ずそちの見舞う事なるまいぞ」

玉の井:「夫なら是もなりませぬ」

(中略)玉の井が頑として承知しないので、侍女ふたりが奥方にあまりにも主が可哀想だと翻意を促すと

玉の井:「夫なれば今宵一夜の暇を進ぜましょう程に」「座禅とやらを遊ばしませ」

一計を案じた右京は、嫌がる家来の太郎冠者(中村隼人)を身替りに仕立てて、衾(ふすま=寝るときに体を覆う夜具)で顔を隠させ持仏堂に篭るよう命じます。ところが、右京のことが気になって仕方がない玉の井は侍女を伴い邸内の持仏堂を訪ねます。身替りは見破られ、逆に玉の井が太郎冠者になりすまして、夫右京の帰りを待つという展開です。とんでもない修羅場が右京を待ち構えることになります。

12月26日夜、NHK「古典芸能への招待」で南座吉例顔見世『身替座禅』が放映されました。右京を仁左衛門が、奥方玉の井は7月大歌舞伎同様、芝翫が務めました。一見、山蔭右京は喜劇風の軽妙な役柄に映りますが、仁左衛門さんが演じると俄然右京のかわいげのある人物像が際立ってきます。逸り立つ夫の浮気心が生々しく見えないように、程よく抑制を効かせた演じ方だと感心しました。愛するあまり鬼瓦と化す妻も然りです。前半は狂言立て、後半は歌舞伎舞踊の要素満載です。

<笑わせようとするのではなく、あくまでも品を大切に、自然に笑っていただけるよう演じたい。男のかわいさも大事で、世の女性方から怒りを買わないような人物を作りたいですね>と語る仁左衛門さんの芸域の深さに惚れ込んでしまいました。そんな京都・南座の公演中、東京不在をいいことに芝翫さんは火遊び・・・鬼瓦ならぬ献身的な妻に合わせる顔がないとは思わなかったのでしょうか。芝翫さんの役柄と今回の不倫報道のギャップに思わず苦笑してしまいました。

2021年|日米株式市場を振り返る~日米の埋め難い企業間格差~

世界上位1000社の時価総額は約8900兆。12月26日付け日経朝刊によれば、その過半53%を占めるのがGAFA+Mに代表される米国企業なのです。初の5割超だそうです。ここまでは予想どおりなのですが、時価総額比、驚く勿れ、日本企業は全体の5%を下回っているのです。上位1000社に占める日本企業の数もわずか68社で、日米間で比較すること自体、おこがましいような状況です。

2021年CYベースで日経平均の年間上昇率は+4.9%、対するNYダウは+19.7%と大きく水をあけられてしまいました。大晦日の今日、日経朝刊一面の小見出しには<海外投信7兆円純増 個人マネー、日本株選ばず>とありました。海外投資のハードルが下がり、成長性に劣る日本株に個人マネーが流入しづらい状況が継続しています。日本人の実質賃金は20年以上横這いですから、当然といえば当然の流れです。新型コロナウイルス禍の下、デジタルトラスフォーメーション(DX)が加速し、日本企業はますます米国をはじめ先進国に差を広げられる可能性大なのです。

2021年の「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」(1位は『ナラティブ経済学(ロバート・J・シラー著・東洋経済新報社)』)の2位にランクインした『バブルの経済理論(櫻川昌哉・日本経済新聞出版)』が<日本経済の長期低迷をもたらしたのは日本の金融の劣化にある>と喝破しています。高度経済成長期以来の旧いビジネスモデルに汲々としがみつき、平成以降もイノベーションに背を向けてきた日本の金融機関はとうの昔に無用の長物と化しているのです。銀行員というお仕事は今やマックジョブ以下かも知れません。事実、メガバンクの新卒採用者数は2016年をピークに激減しています。駅前から銀行店舗が姿を消すのは時間の問題でしょう。自身、この1年間、銀行の窓口を訪れたことは一度たりともありません。クレジットカードに紐づけしておけばコード決済で用が足りてしまうからです。

PayPay(旧:ジャパンネット銀行)や住信SBIネット銀行楽天銀行ソニー銀行セブン銀行のような新興勢力は手数料を引き下げサービス拡充に努めていますので、地銀はもとよりメガバンクさえもはや不要と断言しておきます。世界を見れば、古巣の仏・BNPパリバや英・HSBCは今年リテールビジネスからの撤退を決めています。市場は誠に正直で国内3メガバンクのPBR1割れが定着しています。JPモルガン・チェースやモルスタなど米国勢のPBRは2倍程度、ROEも高いのに比して、3メガの将来性はなきに等しいのです。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんは日経記者の「日本はなぜ長期停滞にあるのでしょうか」の問い掛けにこう答えています。

<ハングリーさがない。安定した職業はもうないのに(キャリアの)線路があるかのように思っている>

若い世代は、このことに早く気づいて、従来の価値観に囚われた職業選択を根本から見直すことです。

【2021|中山大障害】に初参戦~本命オジュウチョウサン(10歳馬)が復活V~

師走の風物詩といえば有馬記念。その陰に隠れて地上波の中継こそありませんが、有馬記念の前日に「中山大障害(なかやまだいしょうがい)」が開催されます。今年で144回目を数えるれっきとしたJ・G1レースです。一度も馬券を買ったことがないので今年初参戦することにしました。

レースが行われるのは中山競馬場。出走馬は、障害コース・大障害コースを周回し、最後の直線は芝コースを疾走します(障害コース=コース立体図のブルーの部分)。7つの障害を11回飛び越し、6回の坂路昇降があります。谷に向かって下り再び坂道を上ること6回、さらに大障害コースでは大竹柵や大生垣を飛越(ひえつ)しなければなりません。しかも距離は4100m。こんな過酷なレースを他に知りません。飛越テクニックのみならずスタミナや精神力が試される「中山大障害」がJRA障害の最高峰レースと言われる所以です。

過酷なレースだけに障害を飛越する度に観客から歓声が上がります。今年は落馬もなく出走した全14頭が完走し観客から惜しみない拍手が送られました。勝ったのは10歳馬にして障害レースのレジェンド、<オジュウチョウサン>(写真下:左がオジュウチョウサン)。2016年、2017年の連覇に続く3度目の制覇となります。引退さえ囁かれながら、蓋を開けてみれば2番人気(単勝3.3倍)。タイムは4:46.6、絶対王者として貫禄の復活Vでした。

馬券の方は、<オジュウチョウサン>に4番人気の<レオビヨンド>を組み合わせたワイドと複勝をとって+3300円。<オジュウチョウサン>を信じて単勝馬券を購入しなかったことが悔やまれます。明日の有馬記念に向けていい景気づけになりました。

【USJ】「禰豆子ポップコーンバケツ」は争奪戦

12月初旬、今年20周年を迎えたユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJ)を訪れました。十数年ぶりの再訪です。前回は次男が小学校高学年だった時期だったので、開業からまもない時期だったことになります。印象に残るアトラクションはごくわずかだったと記憶しています。開業当初こそ、USJの来場者数は1000万人を超え上々の滑り出しだったわけですが、2007年に東証マザーズに上場、2009年に上場廃止と営業面でジリ貧に陥っていったネガティブなイメージがUSJにはつきまといます。脳裡に刷り込まれたそんなイメージが災いして、肝心のチケット手配が後手に回りました。

学校が冬休みに入る前の平日を狙えば、並ばずに人気アトラクションに乗れる「エクスプレス・パス7」は容易に入手できると思い込んでいたのです。ところがどっこい、第一希望の月曜日はすでに入手不可、第二希望の火曜日午後の時間帯がかろうじて空いていたので、慌てて手配した恰好です。USJを訪ねる1ヵ月弱前でさえこんな状況だったのです。複数の組み合わせがあるにせよ、「エクスプレス・パス7」の価格は税込で14100円です。時期によって価格が変動するワンデイパス(12月初旬は税込8200円)と合算すると決してお安くない買い物です。にもかかわらず、オフシーズンの平日でも「エクスプレス・パス」は完売。週末や祝日に訪れるのであれば、数ヶ月前にチケットの手配をしておいた方が良さそうです。USJの来場者数推移を調べてみると、2013年以降は毎年1000万人超え。2016年以降は1400万人を超えているのだそうです。人気回復どころか、知らないうちにUSJは完全復活を果たしていたのです。てっきりTDLTDSの後塵を拝しているとばかり思っていた己の不明を恥じた次第です。畏るべしUSJ !

開場は9時、来場者数が多い日は早めに開門することもあると聞き、1時間ほど前にゲート前に到着。30分ほど経つと、アーリーパークイン組がぞろぞろと入場を開始、その15分後に一斉入場です。真っ先にめざしたのはハリウッドエリアにあるレストラン「スタジオスターズレストラン」前の専用カート。USJ X 鬼滅の刃コラボ期間中(2021/9/16~2022/2/13)にかぎって「禰豆子ポップコーンバケツ」が先着順で販売されているからです。当日販売予定数量が売れてしまえばその日はおしまいですから、午前中、しかも早い時間帯に手に入れておく必要があります。雨天だというのにあっという間に100人前後(自分もそのひとり)が並んだのですが、なかなか行列が捌けません。カート前で代金を支払い紙袋に入ったポップコーンを貰った後、スタッフと客の間で「禰豆子ポップコーンバケツ」の検品が行われていたからです。1点1点手作りなのでその場で確認したらノークレームということなのでしょう。11/18以降、高額転売防止のため期間中1人1個しか購入できなくなったものの、争奪戦解消にはほど遠い状況でした。小さくなった禰豆子が木箱から顔を覗かせる様子が細部まで克明に再現されていて、完成度はかなりのものです。鬼滅ファンが欲しがるのも無理はありません。

このお買物は、娘さんのクリスマス・プレゼントにしたいと知人からのたってのお願いでした。何とか役目を果たし安堵したのも束の間、縦20.5cm×横14cm×奥行14cm|重さ986gの「禰豆子ポップコーンバケツ」を携行したまま、アトラクションを回るわけにはいきません。このアイテム、写真のようになかなか嵩張る代物なのです。混雑したパーク内で万一来場者と接触して壊れたりしたらそれこそ元も子もありませんし、天候が回復し禰豆子が日光を浴びてしまったら塵となって消滅してしまう虞があります(笑)。エントランスの近くにあるコインロッカーへ戻って、ボックスに格納して初めてミッション・コンプリートなのです。